陰陽師の花嫁

優しく微笑んでくれた。

今まで、優菜に対してこんなふうに笑いかけてくれた人はいなかった。

心が暖かくなっていくのを感じた。

「ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしく」


その頃、藤宮の屋敷では…

「どういうことなの⁈なぜ愛菜ではなく優菜が…!」

母親が父親を問い詰めていた。

「私にもわからない。最初から向こうは優菜との縁談を希望してきた。しかし、愛菜の方が釣り合っていると思って、愛菜の縁談として話を進めていた」

「何それ⁉︎どういうことなの!」

近くに座って聞いていた愛菜がカップを床に落とした。

「紅崎家のご子息が、なぜ異能を持たない優菜を…!」

愛菜は拳を握り、震わせた。

「恭弥様と結婚するのは、この私なんだから…!」


「わぁ…!」

それから優菜は、着物に着替えた。

「お似合いですよ」

今まで着たことがない華やかな着物だった。

「旦那様が見繕ってきたものなのですよ。優菜様のためにと」

(こんなにいい着物を…)

「綺麗だな」

「旦那様」

恭弥の声が聞こえて振り向いた。

「よく似合ってる」

「ありがとうございます」

優菜は照れくさそうに視線を逸らした。

「他にも必要なものがあったら一緒に買いに行こう」

「いえ、こんなに綺麗な着物をいただいたのに…」

「遠慮しなくていいんだよ。ここではもっと羽を伸ばしていい」

なぜここまでしてくれるのだろう?

この間会ったばかりだというのに。


その日の夜。

恭弥が部屋にやってきた。

「今夜は、一緒にいてもいいかな?」

優菜は驚いたが、承諾した。

「僕は、君がこの家に来てくれて、とても嬉しいんだ」

優菜の隣に座ると、ポツリと話し始めた。

「しばらくしたら、実家の家族にも紹介しようと思ってる」

「ご実家は、別にあるのですか?」

「うん。俺の両親と姉が住んでいる屋敷が、ここからは少し離れたところにある」

優菜は不安に思った。

恭弥の家族は、無能な自分を歓迎してくれるだろうか?

恭弥の妻として認めてくれるだろうか?

「大丈夫。何も不安に思うことはないよ」

「恭弥様はなぜ、私を妻に迎えてくれたのですか?」

「それは…」

恭弥が手を広げると、青い蝶が恭弥の手のひらに現れた。

「その蝶は…」

優菜は、この青い蝶に見覚えがあった。

「やっぱりこの蝶に見覚えがあるんだね」


恭弥が拳を握ると、次に開いた時には青い蝶はいなくなっていた。

「僕の家系は陰陽師として有名な家でね。帝からの仕事をこなすこともあるんだ」

優菜も聞いたことがある。

この国は五つの家の陰陽師が帝に仕え、国を支えていると。

「ある日、僕の花嫁を決めるという時に、代々から使われてきた鏡が君の姿を写した。君には夢見の力があると言われたんだ」