陰陽師の花嫁

あたりに散らばった食材を拾うのを手伝ってくれた。

「これで全部でしょうか?」

「はい。ありがとうございます」

優菜はお礼を言った。

若いのにとても物腰が柔らかい青年だ。

優菜よりも少し年上だろうか。

「また、お会いできるのを楽しみにしています」

では、と一礼して青年は去って行った。

(また?)

優菜は首を傾げ、後ろ姿を見送った。


そして、顔合わせの当日になった。

愛菜は、朝から上機嫌だった。

「いよいよ今日、お相手のかたにあえるのね!楽しみだわ」

化粧台の鏡に写っている愛菜は、うんとおめかしをして、とても華やかだった。

優菜はその後ろで愛菜の髪をとかしていた。

「ところで、優菜?間違ってもそんなみそぼらしい格好で出てこないでね。お相手に失礼だわ」

優菜の格好は使用人同然だ。

あちこちつぎはぎだらけの着物、手入れのされていない髪、ボロボロの肌。

どう見ても、血を分け合った姉妹には見えないだろう。

「でも、あなた気の毒よね。少しも巫女の力がないなんて。そんなんじゃ、使用人として働くしかないんじゃない?」

あはは!と楽しそうに笑った。

(私だって、好きでこんな家に生まれたかったわけじゃない…)

どこか別の家に生まれていたら…

そう考えたことは何度もあった。

しかし、現実は変わらない。


やがて、お相手の家が到着した。

「ようこそお越しくださいました」

愛菜を真ん中に両隣には父と母が座っていた。

優菜もその様子を隣の部屋からのぞいていた。

「こちらこそ。お招きいただきありがとうございます」

(この声…)

優菜はその声にどこか聞き覚えがあった。

「今回の縁談のお相手は、あなたでしょうか?」

青年は、愛菜を見て尋ねた。

「はい。藤宮(ふじみや)愛菜と申します」

「これはご丁寧にありがとうございます。紅崎恭弥(べにざききょうや)と申します。でも僕が婚姻を申し込みたいのはあなたではありません」

「え?」

さっきまで和やかだった空気が一瞬にして凍りついた。

「何をおっしゃっておいでですか?縁談は愛菜にと…」

母が焦っている様子だった。

「僕が縁談をしたいと言ったのは藤宮優菜様です」

「…お父様、どういうことなの?」

(私に…縁談?)

それを聞いていた優菜も夢かと思うほどだった。

「…この縁談は優菜には勿体なさすぎる。愛菜の方があなたの妻にふさわしい。いかがですか?」

「僕は自分が想っている相手でなければ結婚しようとは思いません」

恭弥の視線が隣の部屋を捉えた。

恭弥が手をかざすと襖が勢いよく開いた。

「よかった。ここにいたんだね」