「あのー、ひとついいですか?」
「何かな?赤比くん」

 礼は光青のテンションに気圧されつつ、小さく手を挙げる。

「何なんですか?“水槽学部”って……」

「よくぞ聞いてくれた!我々、翠涼学園水槽学部…略して『すいすい』っ!それはアクアリウムを通して魚や水草といった生物の素晴らしさを学ぶ部さ!!」

「“あくありうむ”……?」

 と、礼は頭上にハテナマークを浮かべる。

「英語で『魚を飼う水槽』って感じの言葉よ。水族館からそこの小さなキューブ水槽まで、総じて『アクアリウム』よ」

 と、さくらが30センチ四方の小型水槽を指して言う。因みに水槽そのものは英語でwater tankとなり、水や生物を入れて初めてアクアリウムとなる。との見方もするようだ。

「へぇ……生物部とは違うんですか?」

「去年までは生物部だったのよ。でも、彼が部長になってから部の名前を変えたわ」

 と、志麻。

「ああ、農業校でもない学校の設備で飼える生き物なんて、たかが知れてるからね。ならばと水槽だけで飼える魚類等に特化した部にしてやったのさ……と、話が脱線してしまったね。して赤比くん、君はどうして我が部に?」

 光青が再び礼に向き直ると、礼は申し訳なさそうに口を開く。

「……私が入りたいのは、この部じゃなくて吹奏楽部の方です。ブラスバンドの」

「アクアリウムの方じゃなく?」

「ブラスバンドの方です。というか、アクアリウムの方って言い方はココ以外に通用しないです」

 礼の話を聞き、頭を抱える部員達。

「やっぱりソッチの方だったか……」

 と、小声で呟く唯。ソッチもコッチも無いと思うのだが、と礼は思ったが口に出すのをやめた。

「というわけで、私は帰りまs「待ちたまえ!!」

 礼が言い切る前に光青が強引に遮る。

「折角来たのだ、見学して行ってはどうかな?我が水槽学部を、そしてアクアリウムの世界を!!」