「水を入れる前に、あらかじめ流木や石を配置して、水草を植えておくぞ」

 机の上には、部員達が使っていない大小様々な石と、数個の流木。そして3種類の水草。

「水草はその切れ込みのある葉っぱのがウォーターウィステリア、ちょっと赤いのがルド ウィジア。そしてもう一つがアマゾンソードプラントよ。丈夫だし初心者にも優しい種類を揃えたわ」

 と、水草を提供した志麻。それらは彼女が殖やしたものだった。

「ありがとうございます。志麻さん」

「水草のことは姐さんに聞いときゃ間違いねえぞ。 というか俺には聞くな」

「植え方くらいはあたしが教えてあげるね」

 唯のアドバイスの元、礼は木と石を水槽内に配置してゆく。

「いいじゃんいいじゃん。石と流木で水作エイトを隠せばもっと自然に近くなるよ」

「今は部で使ってた石と流木を用意したが、新しく買った流木はアク抜きしないといけないし、その辺で拾った石を水槽に入れる時は変なもんが溶け出さねえか注意しろよ」

 因みに、川から石や流木を持ち帰る時は採集が禁じられていないかも確認しておく必要がある。

「水草って、どうやって植えるの?」

「まず指で底砂をすり鉢状に掘って。そんで、そこに水草を挿したら開けた穴をまた埋めるようにして固定するんだよ」

 と言ったところで、唯はスポンジの付いた平たい金属製の小さな板を取り出した。
「じゃーん、こいつは水草の重り!根を張る前の水草は不安定で抜けやすいから、これを巻いて沈めておこう。ウィステリアやルドウィジアみたいな茎があるのは3本くらいまとめて巻くといいよ」

「ありがとう!こんな道具もあるんだね」

 礼は水草に重りを巻き、言われたとおりの手順で植えてゆく。

「前の方は魚の泳ぐスペースだから空けておけ。どうしても植えたかったら背の低い水草を植えるんだ」

「グロッソスティグマとかヘアーグラスね。礼ちゃんの水槽は伸びるのが早いウィステリアは後ろの方に、ゆっくり伸びるルドウィジアはその手前に植えるといいよ。アマゾンソードは一株しかないからワンポイントで目立つところに配置しよう」

 何も入っていなかった礼の水槽は、見る見る内に完成へと近づく。