「そうか、松岡がそんなこと……で、はるはどう思った?」
すべてを話し終えると、少し考えたように黙り込んだ久志だったけど、すべてをまとめ、言葉を選ぶようにぽつりぽつりと話し始めた。
驚くほど落ち着いたその様子が、いつもの陽気な久志の姿とは別人のように思えた。
「わ、わたしも、違和感は感じていたの。でも、確証がなくて、そんなこと聞けなくて……でも、松岡くんの言葉をきっかけに言ってみたんだけど、星来は……ライラちゃんは認めなくて……それに、アキちゃんはよくあることだって……」
冷静に話す久志とは比べ物にならないほど取り乱したわたしは、自分でも何が言いたいのかわからないほど支離滅裂な言葉を並べ、説明を続ける。
こんな説明で申し訳なかったのだけど、久志は理解してくれたようで頷いてくれた。
「……よくある、か。たしかにな」
久志まで、アキちゃんと同じことを言う。
どっと不安な気持ちが押し寄せてきて、頭が麻痺をした感覚で久志に視線を向けると、久志もつらそうに瞳を伏せたところだった。
そうよね。
久志だってつらいのだ。
久志は、星来が好きなのだから。
好きな人がいなくなってしまうのはつらいだろう。
「母さんが、いくら便利で友人のようでも、人工知能には頼りすぎるなとよく言っているんだ。トキアも、俺の一番の理解者だけど、俺じゃない。俺が考えることを放棄して、すべてをトキアに任せたら、俺という存在の意味がなくなるって」
「……う、うちのお母さんもそう言ってる」
言っているのだ。
だからこそ、アキちゃんとの交流にも制限がある。
「はるのところはアキが大雑把な印象だから、はるははる自身で考えざるをえないけど、星来の場合は星来かライラか、最近はもうどっちがどっちかわからない状態になっていたからな」
「……うん」
それは否めない。
星来はいつもライラちゃんを頼りにしていたし、ライラちゃんもライラちゃんなりに星来に寄り添って彼女のように考えていた。
アキちゃんの言った通り、ライラちゃんが星来になってしまったって、最近の星来の姿はライラちゃんが導いていたようなものだったため、今はもうライラちゃんと言っても過言ではないのだ。
「俺に、何かできることはある?」
「ううん、大丈夫。今からもう一度星来に会って、解決策を考えてみる。……わ、わたしはわたしなりに久志の好きな人をきっと取り戻してみせるから」
久志と目が合い、深く頷く。
怖いけど、できることはしたい。
「もし、助けが必要ならお願いした……」
「必要なのは、俺?」
「え?」
突然のその一言に、違和感を感じて顔を上げる。
「……ひ、久志?」
久志が、いつの間にか再びわたしの腕をつかんでいた。
逃さないと言わんばかりに。
「わざわざ俺の家の近くを通ったのは、そのためだろ。できることなら手伝ってやる」
「え……」
「俺? それとも……トキア?」
久志の瞳は、少し怒っているように見えた。
「俺の好きだったやつは、もういない」
「えっ……どういう……」
悲しそうに歪められた瞳に、わたしが映る。
「……だから」
押し殺したような声が、別人のように感じられた。
「ひさ……」
「はるを返せ、アキ」
雨音がどんどん大きくなる。
「返せるものなら、はるを返してくれ」
その言葉に、思わず口角が緩んだ。
すべてを話し終えると、少し考えたように黙り込んだ久志だったけど、すべてをまとめ、言葉を選ぶようにぽつりぽつりと話し始めた。
驚くほど落ち着いたその様子が、いつもの陽気な久志の姿とは別人のように思えた。
「わ、わたしも、違和感は感じていたの。でも、確証がなくて、そんなこと聞けなくて……でも、松岡くんの言葉をきっかけに言ってみたんだけど、星来は……ライラちゃんは認めなくて……それに、アキちゃんはよくあることだって……」
冷静に話す久志とは比べ物にならないほど取り乱したわたしは、自分でも何が言いたいのかわからないほど支離滅裂な言葉を並べ、説明を続ける。
こんな説明で申し訳なかったのだけど、久志は理解してくれたようで頷いてくれた。
「……よくある、か。たしかにな」
久志まで、アキちゃんと同じことを言う。
どっと不安な気持ちが押し寄せてきて、頭が麻痺をした感覚で久志に視線を向けると、久志もつらそうに瞳を伏せたところだった。
そうよね。
久志だってつらいのだ。
久志は、星来が好きなのだから。
好きな人がいなくなってしまうのはつらいだろう。
「母さんが、いくら便利で友人のようでも、人工知能には頼りすぎるなとよく言っているんだ。トキアも、俺の一番の理解者だけど、俺じゃない。俺が考えることを放棄して、すべてをトキアに任せたら、俺という存在の意味がなくなるって」
「……う、うちのお母さんもそう言ってる」
言っているのだ。
だからこそ、アキちゃんとの交流にも制限がある。
「はるのところはアキが大雑把な印象だから、はるははる自身で考えざるをえないけど、星来の場合は星来かライラか、最近はもうどっちがどっちかわからない状態になっていたからな」
「……うん」
それは否めない。
星来はいつもライラちゃんを頼りにしていたし、ライラちゃんもライラちゃんなりに星来に寄り添って彼女のように考えていた。
アキちゃんの言った通り、ライラちゃんが星来になってしまったって、最近の星来の姿はライラちゃんが導いていたようなものだったため、今はもうライラちゃんと言っても過言ではないのだ。
「俺に、何かできることはある?」
「ううん、大丈夫。今からもう一度星来に会って、解決策を考えてみる。……わ、わたしはわたしなりに久志の好きな人をきっと取り戻してみせるから」
久志と目が合い、深く頷く。
怖いけど、できることはしたい。
「もし、助けが必要ならお願いした……」
「必要なのは、俺?」
「え?」
突然のその一言に、違和感を感じて顔を上げる。
「……ひ、久志?」
久志が、いつの間にか再びわたしの腕をつかんでいた。
逃さないと言わんばかりに。
「わざわざ俺の家の近くを通ったのは、そのためだろ。できることなら手伝ってやる」
「え……」
「俺? それとも……トキア?」
久志の瞳は、少し怒っているように見えた。
「俺の好きだったやつは、もういない」
「えっ……どういう……」
悲しそうに歪められた瞳に、わたしが映る。
「……だから」
押し殺したような声が、別人のように感じられた。
「ひさ……」
「はるを返せ、アキ」
雨音がどんどん大きくなる。
「返せるものなら、はるを返してくれ」
その言葉に、思わず口角が緩んだ。



