彼の告白を受けたのは、春だった。
「僕と付き合ってほしいんだ」
ハートの花びらが散り葉桜となった木の下で、降り注ぐ木漏れ日を一身に受けた彼はキラキラと光っていた。
彼の名前は、長谷部直生。去年の体育祭、団対抗リレーにて一年生ながら三人抜きをして場を湧かせ、学校内で一躍有名になった同級生だった。
生まれて初めての告白に、千崎由衣は動揺しながらも迷うことなく返事をした。
「はい」
私の頷きに、彼は目を見張る。
「ホントに?」
「私でよければ、よろしくお願いします」
一語一語、丁寧に声にした。その返答に、彼は肩を下ろし破顔した。
思わず見上げてしまうほどの快晴の日、緑になった桜の木を眺めながら春の終わりを感じていた。

