なにもかも手に入れている唯が可哀想なら、私はもっと可哀想だ。
「何言ってるかわかんないんだけど。親が家にいないなら遊び放題でよかったじゃん」
本心だった。
いちいち口出ししてくる両親がほとんど家にいないなんて最高だ。

「なんでそんなこと言うんだよ!」
叫ぶように言った篤志くんの目に涙が滲んでいて驚いた。
私はそこまで良くないことを言っただろうか。
「篤志くんが一番の被害者なのに、どうしたの?」

「俺は、被害者だなんて思ってない! 唯が少しでも楽になるなら、それでいいから」
なにをそんなに必死になっているのかわからなかった。
唯が楽になる?
あの子はずっと、楽な人生を送ってきたはずだ。