篤志くんがノロケ顔のまま答えた。
名前を聞いた瞬間川口唯の顔が浮かんでくる。
小柄で細身で、ふわふわの髪の毛は生まれつきのくせっ毛なのだと自分は気にしている。

模範的な女の子の外見をしている川口唯は、男子生徒からの人気ナンバーワン女子生徒からの信用はワーストワンだと言われている。
そんな子に騙されるなんて。
私はゆるゆるとため息を吐いて篤志くんを見つめた。

篤志くんってもっと大人で、もっと賢い人だと思ってた。
その期待を裏切られた気分で背を向ける。
「そっか。じゃあ、お幸せに」
そう言ってひらりと手を振ってみせたのはただの強がりで、失恋の痛みはたしかにこの胸に存在していた。

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