私たちの名前は

 ドンッ。

 お尻に鈍い痛みが走った。もう一度目を開けた時に見えたのは、白い車がものすごい音を立てて通り過ぎていく光景だった。

 その様子を呆然と眺めていると、背後から「いってぇ」と唸り声がした。


「藤井君……?」

 私と藤井君は、2人で尻もちをついたような格好になっていた。

「なにやってんだよ! 車が来てるのに飛び出すとか死ぬ気かよ!」

 後ろから大声で怒鳴られ、肩がびくりと跳ねた。

「ご、ごめん」

 恐る恐る藤井君に向き直る。怒られて反射的に謝ったけれど、見たことのない彼の様子に面食らった。

「いや、別に……無事だったからいいけど」

 藤井君は目を逸らし無言で立ち上がった。

「あの、どうして追いかけてきたの?」
「どうしてって……明星さんが急にどっか行くから……様子も変だったし。嫌なことでもあった?」
「……なにも、ないよ」
「嘘だ。なにもないって顔してない」
「藤井君には関係ないよ」

 私の言葉に、藤井君は少しむっとした表情になる。

「そうかもしれないけど、心配なんだよ」
「私のことなんか心配しなくていいよ」
「は……なんでいつもそういう嘘つくんだよ」

 嘘?
 見上げると藤井君の顔が悲しそうに見えたのは、気のせいだろうか。

「嘘ってなにを」

「心配しなくていいって言うくせに、まだ泣きそうな顔してる。よく『友達はいらない』って言うけど、羨ましそうに他の女子たちのこと見てる。それに」

 藤井君はそこで一度言葉を切った。少し黙り込んだあと、しゃがんで私と目線を合わせた。

「『俺たちは友達じゃないの』って訊いた時、嬉しそうな顔してた」

 私が、嬉しそう?

「なんであんな顔してたんだよ? それは俺と……俺と友達だったら嬉しいってことじゃないの?」
 
 私、そんな顔してたの?

「明星さん、本当は友達欲しいんでしょ? 欲しくて欲しくてたまらないんだよ。それなのにカッコつけて友達いらないとか、見てるこっちがしんどい」

「……しんどいとか、知らないよ。藤井君こそ偉そうに言ってるけど、私の胸のことが好きなんでしょ」

「あれはそういう意味じゃ……! 確かにその、見たことはあるけど」
「最低」

「だから! 胸で好きになったんじゃなくて……明星さんと一緒にいるの楽しいなって思ったからで……」

 そう言った藤井君の顔はみるみるうちに赤くなっていく。

「ああくそっ……なんでこんなタイミングで」

 藤井君は頭を抱えた。