高校2年の4月。楽しみなことといえば、教室の窓から桜を眺めることだ。
私の苗字は「明星」だから、この時期はだいたい1番前の窓際の席になる。登校して席に着いたら窓を開け、穏やかな風を感じながら桜を眺める。晴れた空の青と桜のコントラストが綺麗で、見ていると気持ちが落ち着く。だから春の学校は好きだ。
それなのに。
そんな楽しみが、突然天気に奪われてしまった。
土日に雨が降ったせいで、満開だった桜は半分ほど散ってしまったのだ。雨は月曜の今日も続いており、空はどんよりとした色をしている。
窓をほんの少し開けてみると、ざぁざぁと雨が地面を叩きつける音が聞こえた。理不尽に空から大量の水をぶちまけられ、桜はさぞ腹を立てていることだろう。
「おはよー! ねぇ雨やばくない? 朝から制服濡れちゃったぁ」
朝の静けさに、クラスメイトの賑やかな声が入り込んでくる。私は慌てて窓を閉めた。視線を落とすと、サッシが少しだけ濡れていた。
教室の時計は8時25分を指している。特にすることがないから、いつも朝のホームルームまでには授業の準備を済ませている。
1時間目は数学か。私の好きな教科だ。天気のせいで憂鬱だったけれど、好きな授業なら少しはましになる。
眠いなぁと思いながら、リュックの中へ手を伸ばす。
……ない。
ノートとペンケースは無事机に並んだ。だけど数学の教科書がない。ちなみに数学の先生とは仲良くない。言い訳は難しそうだ。
仕方ない。
私の苗字は「明星」だから、この時期はだいたい1番前の窓際の席になる。登校して席に着いたら窓を開け、穏やかな風を感じながら桜を眺める。晴れた空の青と桜のコントラストが綺麗で、見ていると気持ちが落ち着く。だから春の学校は好きだ。
それなのに。
そんな楽しみが、突然天気に奪われてしまった。
土日に雨が降ったせいで、満開だった桜は半分ほど散ってしまったのだ。雨は月曜の今日も続いており、空はどんよりとした色をしている。
窓をほんの少し開けてみると、ざぁざぁと雨が地面を叩きつける音が聞こえた。理不尽に空から大量の水をぶちまけられ、桜はさぞ腹を立てていることだろう。
「おはよー! ねぇ雨やばくない? 朝から制服濡れちゃったぁ」
朝の静けさに、クラスメイトの賑やかな声が入り込んでくる。私は慌てて窓を閉めた。視線を落とすと、サッシが少しだけ濡れていた。
教室の時計は8時25分を指している。特にすることがないから、いつも朝のホームルームまでには授業の準備を済ませている。
1時間目は数学か。私の好きな教科だ。天気のせいで憂鬱だったけれど、好きな授業なら少しはましになる。
眠いなぁと思いながら、リュックの中へ手を伸ばす。
……ない。
ノートとペンケースは無事机に並んだ。だけど数学の教科書がない。ちなみに数学の先生とは仲良くない。言い訳は難しそうだ。
仕方ない。
