極彩色の祈り

〈プレノの呪いは……ああ、悪戯好きの混沌の神、リヴォリート様が気に入った子供にかける呪いであるとここには書いてある。解く方法は……ふむ、中々に困難なものであるな。様々な素材を集めることが必要であるが、何せ神の悪戯なのだ、入手するのが困難なものの名が並んでおる〉
 アイラ様が入手困難と言うのだからそれは入手が困難なのだろう。
「ちなみに、どんなものなんです?」
 私が聞くと、アイラ様はなぜか嬉しそうにしながら名前を列挙していく。ついでに、手に入れられそうな場所も教えてくれる。
〈種類として分けるのであれば、四つであろう。
 難易度が高い順にあげると、最難関は間違いなく、龍の涙だ。竜の種類は何でもよいと書かれているな。竜には木、土、水、風、火の力を司る五体がいる。その中でも木は気性が穏やかだ。木の竜、森の竜に会いに行くとよいだろう〉
 竜は、伝説上の存在である。太古より生きし者たちであるから、私のような小娘に合ってもらえるかはわからない。涙は寝ているときに取るといいという。うまくいくとよいが、戦うことになったら勝ち目はないだろう。対話で何とかならないだろうか。
〈次に、かけらだな。これは精霊の力が必要であろう。太陽の光のかけらと星のかけらだ。これは我が取り方を知っているぞ。双方とも光の精霊が持っている神具を使うのだ。光のかけらは柄杓で掬い取り、星のかけらは弓矢で射る。光の精霊を祀っている神社があるゆえ、そこに行って巫女から譲り受ければよかろう。大神様たちに直接使える精霊殿だ、さすがに我のように出てくるわけにはいかないであろう〉
 太陽の女神と月の神がうちの最高神とされている。それは精霊界でも同じらしい。光と太陽は密接に関係しているから、恐らく本当に偉い方なのだろう。こうして接していると、アイラ様が精霊だと言う事を忘れてしまいそうになる。アネリーゼ様の時と同じ兆候だ、気を付けよう。
〈次は鉱石だ。これの厄介なところは天然ものであること、そして五百年以上鉱床で眠り、力を十分に蓄えた物でなくてはならぬ。一つはオブシディアン、またの名をコクヨウセキと言う。これは漆黒であればあるほどよい。闇の力を秘めている。二つはイアスピス、またの名をコンゴウセキと言う。これは透明であればあるほどよい。光の力を秘めている。三つはジェイド、またの名をギョクテキセキ。これは浮かび上がる色彩が豊かであればあるほどよく、また、闇の力を少し秘めたテネブラエ、光の力を少し秘めたルクスがあるとなおよいとされているな。ジェイドは水の力を秘めている。光と闇、それらを流すことと映すことができる水。これは良い組み合わせだ〉
 オブシディアン、イアスピス、ジェイド、テネブラエ、ルクス。集めるのはかなり大変そうだ。力を含んでいる含んでいないの見分け方がわからない。これも後で調べたほうがよさそうだ。さすがに読み上げてくださっているアイラ様の邪魔をするわけにはいかない。
〈最後にこれは簡単だな、様々なフルーツの森をめぐってくればよい。まずは、凍氷の森だ。氷葡萄を取ってくればよい。必要なのはその中の種と書いてある。凍氷の森は極寒だ。防寒対策が必要だ。次は、燃炎の荒野。炎林檎の皮が必要と書いてある。これは防火対策が必要となるな。次に、電雷の雨林。雷檸檬の果汁だそうだ。帯電対策が必要となる。そして最後に岩土の砂漠。土椰子の一番頂上にある葉が必要らしい。水を持っていく必要がある。これらは買えば良いのではという話だが、新鮮であればあるほどよいというのだ。時を止める魔術具を持って行って、それらを保存するのはどうであろうか?〉
 どうであろうか、なんて聞かれてもわからない。私がルヨ様へ視線を向けると、ルヨ様ははあ、とため息をついた。
「あります。四つですね。恐らくアネリーゼ様に頼めば用意をしていただけるでしょう。その他の必要なものをリストアップしていただけますか、プレノ。それに沿って、私はアネリーゼ様にお尋ねするだけお尋ねしてみます」
「ありがとうございます」
 私は深くお辞儀をした。そしてふと視線を感じる。そちらに視線を向ければ、アイラ様がうずうずしていた。私は彼女にもお辞儀をする。
「ありがとうございました、アイラ様。その本をお借りしてもよろしいでしょうか?」
〈構わぬ。好きに使ってくれ〉
 私はアイラ様から本を受け取り、二人を見た。
「私はこの後旅の準備に取り掛かります。アネリーゼ様との連絡も密に行います」
「こちらもプロンを手配しましょう」
 私たちは頷きあう。目途が立ったのだ、安心感は半端ない。旅への不安ももちろんあるが。私たちが安心していると、アイラ様も深く頷く。
〈では、我も同行しよう〉