極彩色の祈り

 食事の後すぐにシエルとスミアと別れた。そして迷うことなく厩舎に向かう。厩舎をそっとのぞき込むと、前とは違う人が掃除をしていた。
 ちょっと長い髪を後ろで縛っているので、ウサギのしっぽみたいにその人の髪束が揺れている。その人は私をちらりと見て、驚いたように少しの間固まっていた。
 しかし、すぐにその顔に柔和な笑みをたたえた。ああ、この人は安易に信用してはならないと思う。こういう好青年ほど陰で何を考えているかわからない。
……ルヨ様も同じタイプだ、と心の中で誰かがささやいた気がするけど、無視しよう。
 その心の声を聞いて、あれ、と首をかしげる。なんだかこの人、誰かに似ているような……そこでその人が歩み寄ってきたので、思考を中断する。
「こんにちは。馬を借りに来たの?」
「はい。えっと、借りたい馬は決まっているのですが」
「どれか教えてもらえますか?」
 私はしばらく馬と馬の間を歩いて、クルスを見つけて指さした。青年はまたも目を見開いて驚いていたが、仕方がなさそうに笑った。
なんでそんな顔をされるのかはわからないけれど、その人がてきぱきと準備を進めてくれるので、おとなしく待っていた。
「どうぞ」
 私はお礼を言って、クルスの背によじ登った。クルスが嬉しそうに嘶く。私はクルスの頭をなでてやりながら、青年の注意事項を聞いていた。
 そして一通り聞き終わったので、もういいかなと思って立ち去ろうとしたら、その人に呼び止められた。
「もしかして、これからルヨと言う人に会いに行くのではないですか?」
「あ、そうです。なぜそれを?」
 私は答えてからしまった、と思った。もっと警戒するべきだと思っていたのに。だからせめて、なぜそう思ったのか聞いてみようと思ったのだ。
「私はルヨの弟ですので。プレノと言う少女の話は聞いております」
 そこでああ、と納得した。だからルヨ様に似ているような気がしたのだ。彼は自分は騎士にはなれなくとも身体を動かす仕事が得意なのだと語り、下働きになったのだと言った。
 この孤児院には結構兄弟がいる人も多い。……孤児の中にも、貴族の人はいるのだ。一緒に暮らしてはいないけれど。
 そういう兄弟がいる人はまとめて引き取られるか、捨てられるかする。ルヨ様とこの人もそういうことなのだろう。予想外のつながりに少し驚きながら、私はその人と別れた。
 名前を聞いていないことに気づいたのは、森の入り口にたどり着いた時だった。