「えーと……あの洋館は、こっちだよね?」
私はきょろきょろと辺りを見渡す。今日は昨日とは違うパンツルック、完全なる探索モードだ。あの洋館を囲うように、森のようなものがあった。たくさんの木々。もし本当に森ならば、いつものようなワンピースでは分が悪いと踏んでいたのだが……
「やっぱり、林っていうより森だよね。これ、奥がなかなか見えないよ。結構深そうだ。……食堂の窓はまだ遠いな」
いったん孤児院から離れたところから客観的に観察してみよう。そう思って結構遠くまで来たのだが、そのせいか食堂の窓が遠い。森だということもわかったし、食堂のほうに向かうほうが……
「いや、これは、獣道じゃない、普通の、舗装された道。てことは、人が通る……?」
私がふと発見したのは、均された土の道。しかもかなり真新しそうな馬の蹄の跡。
「……馬」
ちら、と右向こうを見る。厩舎がそこにはあった。私はしばらくそれを見つめていたが、やがてそちらに向けて歩く。数分歩いてその厩舎にたどり着き、中をのぞき込む。
「すみません」
「あ、やっほー。君、だれ?」
……めちゃめちゃくだけたあいさつされた。
私は一瞬引きそうになったが、現れた相手を確認するために踏みとどまる。そこには、土まみれで髪がぼさっとしている男性がいた。みたところ三十代ってとこか。
「馬、借りに来ました。あの森を探索したくて」
「森かー。どうやら、院長様たちも出入りしてるらしいんだよね~。……ま、いっか。馬、貸す。君、真面目っぽいし大丈夫でしょー。好きな子選んで」
間の抜けたような喋り方をする方だが、しゃべってる間にもくるくるとよく働いている。彼は今掃除をしていたようだが、話している間に魔法のように素早く終えてしまった。
それをぼーっと見ていると、いつの間にか男性の手には鞍と手綱が。
「早く選んでー」
男性に急かされ、私は馬たちの間を通っていく。ふと、気を惹かれる子がいた。明るい色。白というわけではないが、少し暗い色のほかの子たちと比べると明るかった。
「この子がいいです」
すると、男性が少し困ったような表情をする。
「え~、その子でいいの? その子、ちょっと色がおかしいんだよねー。なんていうか……馬じゃない色してるんだ。他の子みたいに地味じゃなくていいのー?」
奇抜な色って、どんな色なんだろう。ふとそんな疑問が頭をよぎったが、私には別に関係ないか、と割り切る。
「はい。見分けやすいので、この子がいいです」
「あはは、見分けやすいって、面白いこと言うんだねー。鞍付けてあげるから、その間にヘルメットとっておいでよ。ヘルメットは付けといた方がいいよ、安全だからねー」
しゃべりながら馬を手際よく外に連れ出して、鞍と手綱をそれほど時間もかけずに取り付ける。私も乗馬用ヘルメットを置き場からとってきて、被った。
男性がこちらへ歩いてきて、顎を上げるように促してきた。言われるままに顎を上げると、顎の下で男性がヘルメットの固定用のひもを器用に結んだ。
「はい、これでオッケー。外に遊びに行っていいよ。俺は今日はここに泊りがけになるからさ、帰って来るのはいつでもいいよー」
にかっと笑う男性の言葉に、私は首を傾げた。泊りがけなのはなぜだろう。確かに夜も何かあったら大変だろうが、その場合朝番、昼番、夜番と三つの番に分かれているはずだ。
なのに朝からずっと勤務するというのか。私の疑問が伝わったのだろう。説明してなかったし、不思議だよねー、と男性は笑った。
「今日ね、院長様がお出かけになってるって、言ったでしょ。それに院長様は気まぐれだからさ、いつ帰って来るかわかんないんだよねー。だから今日の当番である俺が泊りがけの当番にされちゃったんだよ。いろいろやらなきゃいけないことあるからさ、早く出かけるなら出かけちゃってよー」
相変わらず間の伸びた変な喋り方だが、院長様がお出かけをなさっていていつ帰って来るかわからないから番をする必要があったってことが分かった。それにどうやらその番はその日の朝番に全部押し付けられてしまうみたいだ。
大変だな、と名前も知らない男性に一礼をした後、鞍の上に載って鐙に足を引っかけた。その子はとても穏やかでおとなしく、私が撫でてやると気持ちよさそうにぶるっと身震いして一声小さく嘶いた。
私はうん、と笑って手綱をくい、と一つ引く。馬が歩きだした。
私はきょろきょろと辺りを見渡す。今日は昨日とは違うパンツルック、完全なる探索モードだ。あの洋館を囲うように、森のようなものがあった。たくさんの木々。もし本当に森ならば、いつものようなワンピースでは分が悪いと踏んでいたのだが……
「やっぱり、林っていうより森だよね。これ、奥がなかなか見えないよ。結構深そうだ。……食堂の窓はまだ遠いな」
いったん孤児院から離れたところから客観的に観察してみよう。そう思って結構遠くまで来たのだが、そのせいか食堂の窓が遠い。森だということもわかったし、食堂のほうに向かうほうが……
「いや、これは、獣道じゃない、普通の、舗装された道。てことは、人が通る……?」
私がふと発見したのは、均された土の道。しかもかなり真新しそうな馬の蹄の跡。
「……馬」
ちら、と右向こうを見る。厩舎がそこにはあった。私はしばらくそれを見つめていたが、やがてそちらに向けて歩く。数分歩いてその厩舎にたどり着き、中をのぞき込む。
「すみません」
「あ、やっほー。君、だれ?」
……めちゃめちゃくだけたあいさつされた。
私は一瞬引きそうになったが、現れた相手を確認するために踏みとどまる。そこには、土まみれで髪がぼさっとしている男性がいた。みたところ三十代ってとこか。
「馬、借りに来ました。あの森を探索したくて」
「森かー。どうやら、院長様たちも出入りしてるらしいんだよね~。……ま、いっか。馬、貸す。君、真面目っぽいし大丈夫でしょー。好きな子選んで」
間の抜けたような喋り方をする方だが、しゃべってる間にもくるくるとよく働いている。彼は今掃除をしていたようだが、話している間に魔法のように素早く終えてしまった。
それをぼーっと見ていると、いつの間にか男性の手には鞍と手綱が。
「早く選んでー」
男性に急かされ、私は馬たちの間を通っていく。ふと、気を惹かれる子がいた。明るい色。白というわけではないが、少し暗い色のほかの子たちと比べると明るかった。
「この子がいいです」
すると、男性が少し困ったような表情をする。
「え~、その子でいいの? その子、ちょっと色がおかしいんだよねー。なんていうか……馬じゃない色してるんだ。他の子みたいに地味じゃなくていいのー?」
奇抜な色って、どんな色なんだろう。ふとそんな疑問が頭をよぎったが、私には別に関係ないか、と割り切る。
「はい。見分けやすいので、この子がいいです」
「あはは、見分けやすいって、面白いこと言うんだねー。鞍付けてあげるから、その間にヘルメットとっておいでよ。ヘルメットは付けといた方がいいよ、安全だからねー」
しゃべりながら馬を手際よく外に連れ出して、鞍と手綱をそれほど時間もかけずに取り付ける。私も乗馬用ヘルメットを置き場からとってきて、被った。
男性がこちらへ歩いてきて、顎を上げるように促してきた。言われるままに顎を上げると、顎の下で男性がヘルメットの固定用のひもを器用に結んだ。
「はい、これでオッケー。外に遊びに行っていいよ。俺は今日はここに泊りがけになるからさ、帰って来るのはいつでもいいよー」
にかっと笑う男性の言葉に、私は首を傾げた。泊りがけなのはなぜだろう。確かに夜も何かあったら大変だろうが、その場合朝番、昼番、夜番と三つの番に分かれているはずだ。
なのに朝からずっと勤務するというのか。私の疑問が伝わったのだろう。説明してなかったし、不思議だよねー、と男性は笑った。
「今日ね、院長様がお出かけになってるって、言ったでしょ。それに院長様は気まぐれだからさ、いつ帰って来るかわかんないんだよねー。だから今日の当番である俺が泊りがけの当番にされちゃったんだよ。いろいろやらなきゃいけないことあるからさ、早く出かけるなら出かけちゃってよー」
相変わらず間の伸びた変な喋り方だが、院長様がお出かけをなさっていていつ帰って来るかわからないから番をする必要があったってことが分かった。それにどうやらその番はその日の朝番に全部押し付けられてしまうみたいだ。
大変だな、と名前も知らない男性に一礼をした後、鞍の上に載って鐙に足を引っかけた。その子はとても穏やかでおとなしく、私が撫でてやると気持ちよさそうにぶるっと身震いして一声小さく嘶いた。
私はうん、と笑って手綱をくい、と一つ引く。馬が歩きだした。



