極彩色の祈り

 私の世界に、光は存在しない。黒と白、私の世界の色は、それだけだ。
赤色、青色、黄色。
 色の名前は知っているけれど、それがどんな色なのかがわからない。


 そもそも、色って何だろう?
 青色にもいろいろな種類があるのだという。
『青色』
『藍色』
『群青色』
『薄青色』
『水色』
 でも、私にはわからない。濃淡があるのはわかる。でも、全部が黒と白の一色だから、
 これが青色だよ、
 これが赤色だよ、
 教えてもらっても、わからない。
 唯一判ったのは、黒と白、という名前の色だけ。
「なんで色の名前が違うの? 両方同じ色だよ?」
 私の世界は、白と黒の濃淡でのみ表現されている。私がそれを理解したのは……ずっと、ずっと、後の話。


「ごめんね……」
 その言葉を、何度聞いただろう。幼い私は、自分が異常という事に気づくことすらできずに、ただ、たまに会いに来る女性の謝罪に、首をかしげるしかなかった。
なぜ、貴女は謝るの? なぜ、貴女が謝るの?

「お前はお前のままでいい」
 その言葉を、何度聞いただろう。たまに会いに来る男性の笑みが、少しだけ怖かったことを思い出す。そして、その笑みがどこか泣きそうに見えたことも。
なぜ、貴方はそう言うの? なぜ、貴方がそう言うの?


 私は成長し、他人と触れ合ううちに、自分が異常なのだと理解した。私の世界に色が無くて、みんなの世界には色があるのだと。
私には色の概念が存在しないから、皆の世界がどのような世界なのかは、想像がつかなかったけれど。
 そして……他人と違う世界が見えていることは、私にとっては、どうでもよいことだった。

 命があること。それが……

 どれだけ幸せなことか、理解していたから。