凛が改めて聞いてきたから、なんだと思った。
「城築くんに一緒に回らないか、聞いてみても良いかな?」
「あ~……」
それを聞いた時、和也は何とも言えない気持ちになった。多分、あいつはこの状況から考えると断ってくるだろうな……という確信に近い直感があったからだ。
「まあ、聞いてみても良いんじゃないかな……」
「そっか。それじゃあ聞いてみるね」
そう言って、凛は龍の方へと行ってしまった。
そして、凛が戻ってきた時には残念そうに「断られちゃった。残念!」という報告をしてきたのだった。こちらとしても、複雑な気持ちだった……。
文化祭ももうすぐ終わり。
ここの高校は、文化祭は夕方頃に終わる。和也たちは最後に凛が見たい、と話していた体育館のメインステージである演劇を見に行っていた。
演劇の内容はおとぎ話を題材としたもので、非常に本格的な内容で演劇をしようという意気込みが伝わってきた。あくまで高校の文化祭の演劇なので、それこそプロの舞台とかと比べるのは酷ではあるが、それでも熱意だけは間違いなく負けていないとは思いたくなる程のものだった。
凛は演劇に夢中になっている様子でずっと目を離さずステージを見ていた。
和也はその様子を見て、なんだか可笑しくなって少しニッコリとしていた。流石に、凛には気づかれていないだろう。
演劇はもうすぐ終盤に入ってきた。最後の方の台詞で和也は少し引っ掛かるものがあった。
『運命は、自分の力で変えられると信じている』
和也はその台詞を聞いた時、あの記憶の中の女性……凛の姉の事をまた思い出す。
きっと記憶の中の彼女は、これを信じて行動をしていたのだと。そして、それは自分の力で変えていったのだと和也は実感した。
演劇も終わって、今度こそ今年のこの高校の文化祭のプログラムは全て終わった。
余韻に浸る間も無く、学生たちは後片付けをしていた。もちろん、和也も例外はなく……自分のクラスの催しの片づけをしていた。
演劇を見終わった凛は「本格的で凄く良かった!」と興奮気味に感想をこぼしていた。それだけ、熱中して見られるものだったのだろう。
「和也、この後打ち上げやるってさ。どうよ?!」
「マジか」
龍からそんな話を聞かされた和也は思わず反射的に行く、と言いかけてしまったがすんでの所で留まる。
「……いや、行くのは行くんだけど。後で行く」
「ほお~?」
少し、ニヤニヤしているのが何だか腹立つ和也だった。
後片付けを終えた後、和也は一人家庭科室へと向かっていた。
和也が家庭科室へ向かった理由は、言わずもがなだった。
「凛、お待たせ」
「……ううん、全然待ってないから大丈夫」
家庭科室の中には、凛が一人で立っていた。中には他に人はいない。今、この場には二人だけだった。多分、皆打ち上げか帰ったかのどちらかだろう。
ちなみに家庭科室の催しは完全にここで何か置かれていたんだろうな、とわかる空白の跡だけになっていた。ここも、既に片づけてしまったのだろう。
「えーっと。一応、聞くんだけどどうしてここで集合?」
そう、和也がここに来た理由は凛と分かれてそれぞれの後片付け先に行く際に凛が発した一言からだった。
『後片付けが終わった後、ちょっと家庭科室に来て欲しい』
そう、耳元で言われたのだった。
「あはは……もちろん、気になるよね」
凛は少し照れくさそうに苦笑する。
そして、凛は展示されていた……今は、綺麗に無くなったテーブルにゆっくり触れる。
「それは……やっぱり私、もうちょっと和也くんと一緒にいたいと思ったからかなあ」
そうして、凛は理由を伝える。
なんだか少し、子どもっぽさを感じる様な理由ではあったが和也は否定するような事はなかった。それに、
「そっか……俺も、かな」
和也自身と同じ想いだったから、だ。
「そっか……」
そう呟いた凛は、和也から背を向いた。
「もしかしたら、私と和也くんが出会うのって本当に奇跡で……運命で、なんだかそう考えるとちょっとドキドキしちゃうなあ」
凛は独り言の様に、何かを言い始めた。
「ドキドキする……って」
「……うん、ドキドキするの」
その言葉を聞いた和也もまた、胸がドキドキと鼓動を立てていた。とてもざわついた心臓の音をバクバクと聞きながらも、けれど和也はそれが嫌だとは今この時思えなかった。
「和也くんがお姉ちゃんの手紙を持っていた事にもビックリしたかも。もしかしたら、お姉ちゃんで未来予知者だったのかも、なんて」
けれど、と前置きして凛は言う。
「お姉ちゃんが和也くんに手紙を渡したのももしかしたら、たまたまだったのかもしれない。けれど、やっぱり私はこう思う」
姉の手紙が和也から渡された時、凛はとても驚いている様子だった。
「城築くんに一緒に回らないか、聞いてみても良いかな?」
「あ~……」
それを聞いた時、和也は何とも言えない気持ちになった。多分、あいつはこの状況から考えると断ってくるだろうな……という確信に近い直感があったからだ。
「まあ、聞いてみても良いんじゃないかな……」
「そっか。それじゃあ聞いてみるね」
そう言って、凛は龍の方へと行ってしまった。
そして、凛が戻ってきた時には残念そうに「断られちゃった。残念!」という報告をしてきたのだった。こちらとしても、複雑な気持ちだった……。
文化祭ももうすぐ終わり。
ここの高校は、文化祭は夕方頃に終わる。和也たちは最後に凛が見たい、と話していた体育館のメインステージである演劇を見に行っていた。
演劇の内容はおとぎ話を題材としたもので、非常に本格的な内容で演劇をしようという意気込みが伝わってきた。あくまで高校の文化祭の演劇なので、それこそプロの舞台とかと比べるのは酷ではあるが、それでも熱意だけは間違いなく負けていないとは思いたくなる程のものだった。
凛は演劇に夢中になっている様子でずっと目を離さずステージを見ていた。
和也はその様子を見て、なんだか可笑しくなって少しニッコリとしていた。流石に、凛には気づかれていないだろう。
演劇はもうすぐ終盤に入ってきた。最後の方の台詞で和也は少し引っ掛かるものがあった。
『運命は、自分の力で変えられると信じている』
和也はその台詞を聞いた時、あの記憶の中の女性……凛の姉の事をまた思い出す。
きっと記憶の中の彼女は、これを信じて行動をしていたのだと。そして、それは自分の力で変えていったのだと和也は実感した。
演劇も終わって、今度こそ今年のこの高校の文化祭のプログラムは全て終わった。
余韻に浸る間も無く、学生たちは後片付けをしていた。もちろん、和也も例外はなく……自分のクラスの催しの片づけをしていた。
演劇を見終わった凛は「本格的で凄く良かった!」と興奮気味に感想をこぼしていた。それだけ、熱中して見られるものだったのだろう。
「和也、この後打ち上げやるってさ。どうよ?!」
「マジか」
龍からそんな話を聞かされた和也は思わず反射的に行く、と言いかけてしまったがすんでの所で留まる。
「……いや、行くのは行くんだけど。後で行く」
「ほお~?」
少し、ニヤニヤしているのが何だか腹立つ和也だった。
後片付けを終えた後、和也は一人家庭科室へと向かっていた。
和也が家庭科室へ向かった理由は、言わずもがなだった。
「凛、お待たせ」
「……ううん、全然待ってないから大丈夫」
家庭科室の中には、凛が一人で立っていた。中には他に人はいない。今、この場には二人だけだった。多分、皆打ち上げか帰ったかのどちらかだろう。
ちなみに家庭科室の催しは完全にここで何か置かれていたんだろうな、とわかる空白の跡だけになっていた。ここも、既に片づけてしまったのだろう。
「えーっと。一応、聞くんだけどどうしてここで集合?」
そう、和也がここに来た理由は凛と分かれてそれぞれの後片付け先に行く際に凛が発した一言からだった。
『後片付けが終わった後、ちょっと家庭科室に来て欲しい』
そう、耳元で言われたのだった。
「あはは……もちろん、気になるよね」
凛は少し照れくさそうに苦笑する。
そして、凛は展示されていた……今は、綺麗に無くなったテーブルにゆっくり触れる。
「それは……やっぱり私、もうちょっと和也くんと一緒にいたいと思ったからかなあ」
そうして、凛は理由を伝える。
なんだか少し、子どもっぽさを感じる様な理由ではあったが和也は否定するような事はなかった。それに、
「そっか……俺も、かな」
和也自身と同じ想いだったから、だ。
「そっか……」
そう呟いた凛は、和也から背を向いた。
「もしかしたら、私と和也くんが出会うのって本当に奇跡で……運命で、なんだかそう考えるとちょっとドキドキしちゃうなあ」
凛は独り言の様に、何かを言い始めた。
「ドキドキする……って」
「……うん、ドキドキするの」
その言葉を聞いた和也もまた、胸がドキドキと鼓動を立てていた。とてもざわついた心臓の音をバクバクと聞きながらも、けれど和也はそれが嫌だとは今この時思えなかった。
「和也くんがお姉ちゃんの手紙を持っていた事にもビックリしたかも。もしかしたら、お姉ちゃんで未来予知者だったのかも、なんて」
けれど、と前置きして凛は言う。
「お姉ちゃんが和也くんに手紙を渡したのももしかしたら、たまたまだったのかもしれない。けれど、やっぱり私はこう思う」
姉の手紙が和也から渡された時、凛はとても驚いている様子だった。



