「あのさ……伊豆野さん」
「ん? どうしたの?」
和也はそうした今日の様子を見て思ったのだ。彼女は普段どのように部活動をしているか。
「明日も部活してるならさ……見に行ってもいい?」
そう言いだした途端、彼女が立ち止まる。その表情が少しずつ驚いた顔になっていくのを見た時には完全に手遅れだと悟った。
「あ、いや! 別に下心あるとかそういう訳じゃなくって!」
「……ふふっ、あはははは!」
すると、彼女は本格的に笑いだす。今回に関しては完全に変な事を口走ってしまったと自覚していた和也は本当に恥ずかしかった。そういう事をまだ仲良くない相手にいうのは完全にガツガツと強く行き過ぎていた。
幸いにも彼女が引かなかっただけまだマシとも言えるかもしれないが、彼女から見ると完全に自分の顔は赤かったのかもしれない。
「はあぁ……高野さん、急過ぎるって!」
それはそうだ。凛の反応は和也の想像通りであった。けれど、そこからは想像通りのものではなかった。
「あ、一応返答しておくと……OK、かな」
「えぇ?! いいの?!」
「もちろん! 気になってるなら見に行けばいいって! 同じ高校なんだから見にいっても良いって、部活だから見に来てくれる人がいたら歓迎でもあるし」
「そ、そういうもの?」
そういうものだって! と凛は肯定する。完全にまずい事を言ってしまったとは思うが、結果的には上手くいって良かったと思う。
「いやあ……今日出会ったばかりだけど、君面白いよね!」
凛ははきはきとした笑顔でそう和也の事を伝える。何だか、そういった反応が少し気になってしまうのが和也だった。
*
近所にあるいつも遊びに行く公園。ブランコや、滑り台といったいくつかの遊具が置かれるぐらいにはスペースの広い公園でその日は一人で遊んでいた。
けれど、それはたまたま一人だっただけだ。いつも遊んでいる友だちはその日は用事があってこられなかったからだ。一人で、遊んでいた。ブランコに乗ってギコギコとした音を鳴らしながら左右に揺れ動くのを楽しんでいる。たった一人で遊んでいるのは寂しい筈なのに、けれど自分の動きに答えるようにブランコが動くのがとても楽しかった事を覚えている。
それだけの記憶だった筈だけど。
「ブランコ、楽しい?」
呼びかけられる。少し高くて、穏やかで安らかな声だった。声のした方へ向くと、そこには
*
そこで、目が開く。視線の先にはいつも朝起きる時に見る、天井が。
ベッドから体を起き上がらせた和也はそのまま、学校へ行く準備を始める。着替え、荷物確認……。
けれど、頭の中には先ほどの夢がこびりついてくる。
何故か、自分でもわからないのにずっと覚えていた記憶。その記憶の内容が……書き換わった。そうとしか言えない様な感覚に見舞われたからだ。
先ほどの夢が、あまりにも鮮烈に脳に焼き付いていた。あの声は、一体なんだったのだろう。
目を覚ます直前に、聞こえたあの声。自分を呼び掛ける声が今でも脳の中で繰り返し再生されている。今まで何度か思い返す事はあっても、誰かに呼びかけられた事があった訳がない。
けれど、それを考えている暇もなかった。まずは、今日の出来る事を少しずつ片づけていこう。
朝の支度を終えた後、和也はカバンを背負って家を出る。
徒歩でも十分余裕がある距離に高校があるため、時間としては十分間に合う。和也は、高校まで一人で歩いていく。
「お~い和也~!」
校門前で和也は龍に声をかけられる。
「おう、龍。今日もか?」
今日は、昨日の勉強の続きの事について声を掛けてきたんだろうと予想した和也はそのことについて触れる。
「そうそう! マジでありがたい!」
「……まあ、なるべく一人で頑張れたほうが良いと思うけど」
「いいじゃねーか、人に頼るのも大事だぜ?」
「そうだけどな……」
勉強に関してはもう少し、自分一人でどうにかしようとしている所を見せてほしい。そう思わずにはいられなかった。
「それに一応、あの後は復習したんだしな、ホラ!」
そう言って龍はノートを取り出して、あるページを開くとそれをこちらに見せつけてくる。
そのページは問題や、その問題の解き方。そして、覚えるヒントと言った内容が書かれていた。一見しただけで和也はこのページを見るのは初めてだと気づく。昨日、自分が教えた事を復習するように、そして自分が覚えやすい様に組み替えられた内容とざっくりと見た感じでその印象となった。
「お、ちゃんと昨日教えた事をやってるじゃん」
「だろ? これでも俺だってちゃんと成長しているという事だ!」
胸を張るように龍は、ノートをリュックの中にしまう。
「それはわかったよ。じゃあ行くか」
「ん? どうしたの?」
和也はそうした今日の様子を見て思ったのだ。彼女は普段どのように部活動をしているか。
「明日も部活してるならさ……見に行ってもいい?」
そう言いだした途端、彼女が立ち止まる。その表情が少しずつ驚いた顔になっていくのを見た時には完全に手遅れだと悟った。
「あ、いや! 別に下心あるとかそういう訳じゃなくって!」
「……ふふっ、あはははは!」
すると、彼女は本格的に笑いだす。今回に関しては完全に変な事を口走ってしまったと自覚していた和也は本当に恥ずかしかった。そういう事をまだ仲良くない相手にいうのは完全にガツガツと強く行き過ぎていた。
幸いにも彼女が引かなかっただけまだマシとも言えるかもしれないが、彼女から見ると完全に自分の顔は赤かったのかもしれない。
「はあぁ……高野さん、急過ぎるって!」
それはそうだ。凛の反応は和也の想像通りであった。けれど、そこからは想像通りのものではなかった。
「あ、一応返答しておくと……OK、かな」
「えぇ?! いいの?!」
「もちろん! 気になってるなら見に行けばいいって! 同じ高校なんだから見にいっても良いって、部活だから見に来てくれる人がいたら歓迎でもあるし」
「そ、そういうもの?」
そういうものだって! と凛は肯定する。完全にまずい事を言ってしまったとは思うが、結果的には上手くいって良かったと思う。
「いやあ……今日出会ったばかりだけど、君面白いよね!」
凛ははきはきとした笑顔でそう和也の事を伝える。何だか、そういった反応が少し気になってしまうのが和也だった。
*
近所にあるいつも遊びに行く公園。ブランコや、滑り台といったいくつかの遊具が置かれるぐらいにはスペースの広い公園でその日は一人で遊んでいた。
けれど、それはたまたま一人だっただけだ。いつも遊んでいる友だちはその日は用事があってこられなかったからだ。一人で、遊んでいた。ブランコに乗ってギコギコとした音を鳴らしながら左右に揺れ動くのを楽しんでいる。たった一人で遊んでいるのは寂しい筈なのに、けれど自分の動きに答えるようにブランコが動くのがとても楽しかった事を覚えている。
それだけの記憶だった筈だけど。
「ブランコ、楽しい?」
呼びかけられる。少し高くて、穏やかで安らかな声だった。声のした方へ向くと、そこには
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そこで、目が開く。視線の先にはいつも朝起きる時に見る、天井が。
ベッドから体を起き上がらせた和也はそのまま、学校へ行く準備を始める。着替え、荷物確認……。
けれど、頭の中には先ほどの夢がこびりついてくる。
何故か、自分でもわからないのにずっと覚えていた記憶。その記憶の内容が……書き換わった。そうとしか言えない様な感覚に見舞われたからだ。
先ほどの夢が、あまりにも鮮烈に脳に焼き付いていた。あの声は、一体なんだったのだろう。
目を覚ます直前に、聞こえたあの声。自分を呼び掛ける声が今でも脳の中で繰り返し再生されている。今まで何度か思い返す事はあっても、誰かに呼びかけられた事があった訳がない。
けれど、それを考えている暇もなかった。まずは、今日の出来る事を少しずつ片づけていこう。
朝の支度を終えた後、和也はカバンを背負って家を出る。
徒歩でも十分余裕がある距離に高校があるため、時間としては十分間に合う。和也は、高校まで一人で歩いていく。
「お~い和也~!」
校門前で和也は龍に声をかけられる。
「おう、龍。今日もか?」
今日は、昨日の勉強の続きの事について声を掛けてきたんだろうと予想した和也はそのことについて触れる。
「そうそう! マジでありがたい!」
「……まあ、なるべく一人で頑張れたほうが良いと思うけど」
「いいじゃねーか、人に頼るのも大事だぜ?」
「そうだけどな……」
勉強に関してはもう少し、自分一人でどうにかしようとしている所を見せてほしい。そう思わずにはいられなかった。
「それに一応、あの後は復習したんだしな、ホラ!」
そう言って龍はノートを取り出して、あるページを開くとそれをこちらに見せつけてくる。
そのページは問題や、その問題の解き方。そして、覚えるヒントと言った内容が書かれていた。一見しただけで和也はこのページを見るのは初めてだと気づく。昨日、自分が教えた事を復習するように、そして自分が覚えやすい様に組み替えられた内容とざっくりと見た感じでその印象となった。
「お、ちゃんと昨日教えた事をやってるじゃん」
「だろ? これでも俺だってちゃんと成長しているという事だ!」
胸を張るように龍は、ノートをリュックの中にしまう。
「それはわかったよ。じゃあ行くか」



