和也の成績すら上回っていたのは少し複雑ではあるのだが……これで、また赤点取った時の危機は完全に回避したと言ってもいいだろう。
「ホントに頑張ったよな、龍」
「そうだろ? 俺、今回はすげー頑張ったわ」
へへん、と髭を触る様な……仕草をして偉いだろー、とアピールをする。調子に乗り過ぎているかもしれないが……龍がそれぐらいしたくなるくらいには頑張って、そして結果を出したのも確かではあった。
「ところでよ、和也。お前は凛ちゃんとの仲は進展あったのか?」
「……って、なんだよ急にそんな事聞いてきて!!」
龍から、急に凛の話題が出てくる。和也はその事に困惑しているがそんな様子をよそに龍は続ける。
「いやほらな? 最近、より一層仲が良くなってる様に見える訳で」
「……訳で?」
「そろそろ告るとか、そういう仲なのかって思ってさ」
「いやいや、話が飛びすぎじゃないか?!」
龍がそんな話をしてくるものだから、和也は大分動揺していた。急にそんな……告白とか、そういう話をされても本当に困る、というか。
「いやいや。正直脈ありだと思うからさ、ここは思い切って行けばいいって」
「そんな事言われても」
「ならもし、凛ちゃんが他の男と付き合ったとかになった時、お前はそういうものだって思えるのか」
「それは……」
凛に彼氏ができたって話をされた時。……何となく、和也の心の中でそんな事が起きたと仮定すると、なんだか少しもやもやする気持ちが生まれる。とは言われても、正直な所和也の中では告白してみたら、と言われても正直困る話でもあった。
少しもやもやするような話ではあったけれど、そんな恋愛とか意識しているか。と言われるとそうでもないとしか答えられない。
「まあ、もうちょっと時間経ってから考えとけばいいよな」
「……お、おう」
龍から急な話が投下されると、何だか和也はとても落ち着かない気持ちになっていた。そんな事を考えたからなのか。
あんなにはっきりと都合の良いタイミングで。
*
「お姉さんは、ブランコ好き?」
そう、聞いてみるとその女性は少し笑顔を見せると。
「好きだよ。小さい子がいっぱいブランコに乗る姿を見ていると、元気になれるから」
こう答えた。
「そうなんだ。じゃあボクのブランコにのってるすがたをみてもげんきになれる?」
自分はそれに対して、ワクワクとして答える。どうしてだろう。知らない人なのに、なんだか聞いてみたくて仕方ない。そんな好奇心が勝っていた。
「そうだね、君が楽しそうにブランコで遊んでいる姿を見てると、本当に元気になれるかも」
そうして、記憶の中の女性は微笑んでいた。
女性はそうだ、と思いついた様に何かを取り出す。
「これ、もし君にとても大事な人が出来た時に渡してみると、いいかも」
そう言われて女性に渡されたものは、何かが入ったパンダ柄の封筒だった。パンダ柄だからか、なんだか可愛らしいと感じたそれを開けようとする。
「ああ待って。それは、大事な人に開けてもらって欲しいの。その時まで開けないで大事にしまっておいて」
「え、どうして?」
突然渡されたのも、それを開けずに大事に置いてほしいというのも全然わからなかった。理由を聞かれて少し困った顔になった女性は間を置いて、答える。
「私、君にそれをお守りみたいに持っていてくれたら良いなって思うの。だから、お願いを守って欲しいかな」
*
朝、いつもの様に目の前に広がるのは天井。天井には、明かり用の電球を守るカバーが見える。
けれど、和也の心中はとても穏やかとは言えなかった。はっきりと、思い出した様な気がする。段階的に、少しずつと和也は思い出していったのだ。
和也は寝ていたベッドから降りる。今日も学校があるから、制服に着替える。そして、先ほどの夢を思い返していた。あの夢は、あの神社の近くの公園でたまたま遊ぶ機会があった十年前に実際に和也が体験した事だった。ただ、遊んでいただけの記憶なのにずっとそれを覚えていた。
なんて事のない、思い出だと思っていたけれど。憶えていない事があった。
あの日、お姉さんに声を掛けられて渡された。記憶の中で特徴的に表れていたあのパンダの柄のデザインの封筒。あれを渡されたのだ。あの記憶の中では大事に保管しておいてほしい、と言われていた。つまり、当時の……幼稚園児の頃に使っていた和也の入れ物か何かに入っている可能性がある。
制服を着替え終わった和也は、その封筒を家から出る前に少し探してみようと考えた。
「母さん、幼稚園の時に使ってた入れ物ってどこにしまってたっけ?」
和也は台所で朝ごはんの準備をしていた母を見つけて、探し物について聞いていた。
「入れ物? 確かあんたの部屋の押し入れだと思うけど急にどうしたの?」
「ホントに頑張ったよな、龍」
「そうだろ? 俺、今回はすげー頑張ったわ」
へへん、と髭を触る様な……仕草をして偉いだろー、とアピールをする。調子に乗り過ぎているかもしれないが……龍がそれぐらいしたくなるくらいには頑張って、そして結果を出したのも確かではあった。
「ところでよ、和也。お前は凛ちゃんとの仲は進展あったのか?」
「……って、なんだよ急にそんな事聞いてきて!!」
龍から、急に凛の話題が出てくる。和也はその事に困惑しているがそんな様子をよそに龍は続ける。
「いやほらな? 最近、より一層仲が良くなってる様に見える訳で」
「……訳で?」
「そろそろ告るとか、そういう仲なのかって思ってさ」
「いやいや、話が飛びすぎじゃないか?!」
龍がそんな話をしてくるものだから、和也は大分動揺していた。急にそんな……告白とか、そういう話をされても本当に困る、というか。
「いやいや。正直脈ありだと思うからさ、ここは思い切って行けばいいって」
「そんな事言われても」
「ならもし、凛ちゃんが他の男と付き合ったとかになった時、お前はそういうものだって思えるのか」
「それは……」
凛に彼氏ができたって話をされた時。……何となく、和也の心の中でそんな事が起きたと仮定すると、なんだか少しもやもやする気持ちが生まれる。とは言われても、正直な所和也の中では告白してみたら、と言われても正直困る話でもあった。
少しもやもやするような話ではあったけれど、そんな恋愛とか意識しているか。と言われるとそうでもないとしか答えられない。
「まあ、もうちょっと時間経ってから考えとけばいいよな」
「……お、おう」
龍から急な話が投下されると、何だか和也はとても落ち着かない気持ちになっていた。そんな事を考えたからなのか。
あんなにはっきりと都合の良いタイミングで。
*
「お姉さんは、ブランコ好き?」
そう、聞いてみるとその女性は少し笑顔を見せると。
「好きだよ。小さい子がいっぱいブランコに乗る姿を見ていると、元気になれるから」
こう答えた。
「そうなんだ。じゃあボクのブランコにのってるすがたをみてもげんきになれる?」
自分はそれに対して、ワクワクとして答える。どうしてだろう。知らない人なのに、なんだか聞いてみたくて仕方ない。そんな好奇心が勝っていた。
「そうだね、君が楽しそうにブランコで遊んでいる姿を見てると、本当に元気になれるかも」
そうして、記憶の中の女性は微笑んでいた。
女性はそうだ、と思いついた様に何かを取り出す。
「これ、もし君にとても大事な人が出来た時に渡してみると、いいかも」
そう言われて女性に渡されたものは、何かが入ったパンダ柄の封筒だった。パンダ柄だからか、なんだか可愛らしいと感じたそれを開けようとする。
「ああ待って。それは、大事な人に開けてもらって欲しいの。その時まで開けないで大事にしまっておいて」
「え、どうして?」
突然渡されたのも、それを開けずに大事に置いてほしいというのも全然わからなかった。理由を聞かれて少し困った顔になった女性は間を置いて、答える。
「私、君にそれをお守りみたいに持っていてくれたら良いなって思うの。だから、お願いを守って欲しいかな」
*
朝、いつもの様に目の前に広がるのは天井。天井には、明かり用の電球を守るカバーが見える。
けれど、和也の心中はとても穏やかとは言えなかった。はっきりと、思い出した様な気がする。段階的に、少しずつと和也は思い出していったのだ。
和也は寝ていたベッドから降りる。今日も学校があるから、制服に着替える。そして、先ほどの夢を思い返していた。あの夢は、あの神社の近くの公園でたまたま遊ぶ機会があった十年前に実際に和也が体験した事だった。ただ、遊んでいただけの記憶なのにずっとそれを覚えていた。
なんて事のない、思い出だと思っていたけれど。憶えていない事があった。
あの日、お姉さんに声を掛けられて渡された。記憶の中で特徴的に表れていたあのパンダの柄のデザインの封筒。あれを渡されたのだ。あの記憶の中では大事に保管しておいてほしい、と言われていた。つまり、当時の……幼稚園児の頃に使っていた和也の入れ物か何かに入っている可能性がある。
制服を着替え終わった和也は、その封筒を家から出る前に少し探してみようと考えた。
「母さん、幼稚園の時に使ってた入れ物ってどこにしまってたっけ?」
和也は台所で朝ごはんの準備をしていた母を見つけて、探し物について聞いていた。
「入れ物? 確かあんたの部屋の押し入れだと思うけど急にどうしたの?」



