凛はその案を聞いた途端少し、理解が進まない様子だった。
「そう。一つの方針に定めようとすると、全然決まらないなら、出来る範囲で皆のやりたい事をやる展示にすればいいんだ」
そう、ここまでの話し合いでは一つのテーマに絞ってどのような展示にするかを話し合いしていた。それは、手芸部がどのような方向性で行くのか外部の人にもわかりやすく伝えるため、というのが目的の一つでもある、と凛は言っていた。
けれど、その結果中々テーマが決まらないという状況に陥っていた。
それなら、あえて皆の案を取り入れていっその事ごちゃまぜになった様な空間にすれば良いのだという事を説明した。無論、行き過ぎないように……という部分もある事は言ったが。
「なるほど……確かに、それなら皆納得してくれるかもしれない!」
凛は、その案を聞いてすぐにとても良い笑顔になっていきその案に賛同してくれた。後は、皆にも説明できるようにしておきたいとは思う。
「これは伊豆野さんが説明してくれれば良いと思う」
「えっ? でも、これって高野くんの案じゃ……」
「いや、これは伊豆野さんが説明してくれれば良いよ。もちろん俺の案って事は伝えた方が良いとも思うけど」
これはあくまで手芸部の部長として、大事な事だと思う。部長がこういう方針を伝える事で皆納得できるようにするのが、この場では大事だ。
「だから、伊豆野さんが頑張って説明してくれれば納得できる」
「……うん、わかった。やってみるね。皆も待たせているし」
まだ話し合いは途中だった。手芸部の部員たちには部屋で待ってもらって和也と凛の二人、廊下でこの話をしていた。
一度、凛が最初に聞いておけばこの案の実行を成立させられると和也が判断したからだった。あくまで外部の人間でしかない和也の意見をすぐに伝えても、あの状況だと難しいだろう。
「それじゃあ、行ってくるね」
そう言って、凛は家庭科室の中へと戻っていった。
それから、しばらく経っただろう。
凛が家庭科室から出てきた。そして、和也の目の前へと歩いてくる。
「高野くん……! 皆、納得してくれた!」
「ホントか?! よし!!」
そして、凛から伝えられた事はこの案に皆賛同してくれたことだった。
これから、皆で開催までの期間、全力で展示の準備に取り掛かる事になったという話を伝えられたのだ。つまり、和也の案が上手い事手芸部のバラバラだった意見を一つに収束する事ができた、と言う事だった。
「ありがとう……ホントに」
「いや……俺だって、ちょっと昨日の件は責任があった訳だし」
あそこまでしておいて、役に立たなかった。なんて事は凛にとても申し訳のない事ではあった。けど、あの話し合いに参加した事で状況を理解する事がちゃんとできたのもこの結果に繋がったのかもしれないと今では思えた。
「なんだか……高野くんに、助けられっぱなしだなって」
「そうか……な?」
和也は、凛のそういう意味が少し理解できていなかったと思う。
「そうだよ。会った時からずっと……助けてくれていたし」
確かに、最初に放課後出会ってから何だか彼女の事をずっと気にかけている様な所はあっただろう。でも、和也は不思議とそれは特別な事ではないと感じていた。
「そっか。そうだったな。俺……別に大した事、してるって感じじゃなかったけど」
「しているよ! ホントに……だから、ありがと……」
そうして、凛は小さい声でつぶやいた。
「ありがとう……和也くん」
と。
「え……?」
「な、なんでもないよっ! それじゃあ私、家庭科室に戻るからね」
彼女は顔を赤らめさせると、家庭科室に戻っていった。
和也は、今彼女が自分の事を名前で呼んだという事実を一瞬理解できなかった。けれど、何だか彼女から名前呼びされるのは何故か最初は恥ずかしかった筈なのに。
その時は、嬉しかったと思っていた。
*
それから、凛から時々話を聞くのだが文化祭の展示の準備は驚く程早く進んでいっている、という話だった。
どうも、全員の案を上手い事取り入れていた結果モチベーションが部全体で高まっていてそれが準備を順調に進める要因になっていた事が理由になっている様だ。とにかく、調子よく進んでいて良かった。
一方、和也の方でもやっと長期間の努力が実る結果が出てきた。
「やったぜ!! 和也、俺赤点回避できたわぁ!」
教室で、龍はとても大はしゃぎする様子を見せる。その様子を見て、周囲が少しざわざわとしている様子だった。というのも、龍は勉強会を頑張り続けた結果、二学期の中間テストで……なんと、今まで赤点常連だったのを見事に回避してみせた。
それも、クラスでも最上位まで行って。
「そう。一つの方針に定めようとすると、全然決まらないなら、出来る範囲で皆のやりたい事をやる展示にすればいいんだ」
そう、ここまでの話し合いでは一つのテーマに絞ってどのような展示にするかを話し合いしていた。それは、手芸部がどのような方向性で行くのか外部の人にもわかりやすく伝えるため、というのが目的の一つでもある、と凛は言っていた。
けれど、その結果中々テーマが決まらないという状況に陥っていた。
それなら、あえて皆の案を取り入れていっその事ごちゃまぜになった様な空間にすれば良いのだという事を説明した。無論、行き過ぎないように……という部分もある事は言ったが。
「なるほど……確かに、それなら皆納得してくれるかもしれない!」
凛は、その案を聞いてすぐにとても良い笑顔になっていきその案に賛同してくれた。後は、皆にも説明できるようにしておきたいとは思う。
「これは伊豆野さんが説明してくれれば良いと思う」
「えっ? でも、これって高野くんの案じゃ……」
「いや、これは伊豆野さんが説明してくれれば良いよ。もちろん俺の案って事は伝えた方が良いとも思うけど」
これはあくまで手芸部の部長として、大事な事だと思う。部長がこういう方針を伝える事で皆納得できるようにするのが、この場では大事だ。
「だから、伊豆野さんが頑張って説明してくれれば納得できる」
「……うん、わかった。やってみるね。皆も待たせているし」
まだ話し合いは途中だった。手芸部の部員たちには部屋で待ってもらって和也と凛の二人、廊下でこの話をしていた。
一度、凛が最初に聞いておけばこの案の実行を成立させられると和也が判断したからだった。あくまで外部の人間でしかない和也の意見をすぐに伝えても、あの状況だと難しいだろう。
「それじゃあ、行ってくるね」
そう言って、凛は家庭科室の中へと戻っていった。
それから、しばらく経っただろう。
凛が家庭科室から出てきた。そして、和也の目の前へと歩いてくる。
「高野くん……! 皆、納得してくれた!」
「ホントか?! よし!!」
そして、凛から伝えられた事はこの案に皆賛同してくれたことだった。
これから、皆で開催までの期間、全力で展示の準備に取り掛かる事になったという話を伝えられたのだ。つまり、和也の案が上手い事手芸部のバラバラだった意見を一つに収束する事ができた、と言う事だった。
「ありがとう……ホントに」
「いや……俺だって、ちょっと昨日の件は責任があった訳だし」
あそこまでしておいて、役に立たなかった。なんて事は凛にとても申し訳のない事ではあった。けど、あの話し合いに参加した事で状況を理解する事がちゃんとできたのもこの結果に繋がったのかもしれないと今では思えた。
「なんだか……高野くんに、助けられっぱなしだなって」
「そうか……な?」
和也は、凛のそういう意味が少し理解できていなかったと思う。
「そうだよ。会った時からずっと……助けてくれていたし」
確かに、最初に放課後出会ってから何だか彼女の事をずっと気にかけている様な所はあっただろう。でも、和也は不思議とそれは特別な事ではないと感じていた。
「そっか。そうだったな。俺……別に大した事、してるって感じじゃなかったけど」
「しているよ! ホントに……だから、ありがと……」
そうして、凛は小さい声でつぶやいた。
「ありがとう……和也くん」
と。
「え……?」
「な、なんでもないよっ! それじゃあ私、家庭科室に戻るからね」
彼女は顔を赤らめさせると、家庭科室に戻っていった。
和也は、今彼女が自分の事を名前で呼んだという事実を一瞬理解できなかった。けれど、何だか彼女から名前呼びされるのは何故か最初は恥ずかしかった筈なのに。
その時は、嬉しかったと思っていた。
*
それから、凛から時々話を聞くのだが文化祭の展示の準備は驚く程早く進んでいっている、という話だった。
どうも、全員の案を上手い事取り入れていた結果モチベーションが部全体で高まっていてそれが準備を順調に進める要因になっていた事が理由になっている様だ。とにかく、調子よく進んでいて良かった。
一方、和也の方でもやっと長期間の努力が実る結果が出てきた。
「やったぜ!! 和也、俺赤点回避できたわぁ!」
教室で、龍はとても大はしゃぎする様子を見せる。その様子を見て、周囲が少しざわざわとしている様子だった。というのも、龍は勉強会を頑張り続けた結果、二学期の中間テストで……なんと、今まで赤点常連だったのを見事に回避してみせた。
それも、クラスでも最上位まで行って。



