だから、そんな悩みをどうにかして振り払いたい気持ちがあった。
「俺が手伝って、皆の意見がまとまるようにしたいって」
「それは……嬉しい申し出だけど、流石に助けてばかりじゃ」
「いや、伊豆野さんだって……龍周りで色々助けてくれたし、お互い様だって」
それに、龍が凛との会話等を見て少しややこしい事になった時、凛は助けてくれた。和也はそんな事もあったから恩返しみたいな形で手芸部の文化祭の展示が上手くいくように手伝いをしたかった。
「そっか……それもそう、だね」
凛は、少し顔を俯かせるとボソボソと独り言をしている。そして、顔を上げて和也を見た時、笑顔を見せた彼女は
「それじゃあ、よろしくお願いします」
そう言って和也の申し出を受け入れた。
*
「それじゃあ、今日も展示について話し合いするよ~」
「ぶちょ~。今日は高野先輩も連れてきてるんですか?」
和多利が、何故か今日その場にいる和也について触れてくる。今までいなかったのに急にいたらその反応になるのは仕方ないだろう。和也も同じ反応をする自信がある。
「もう! 高野くんは、手伝ってくれるって話で来てもらっているんだから、入ちゃんも変なからかいをしないように?」
「は~い」
少し面倒そうな様子だったが……とりあえず、和多利は素直に聞き入れていた。
自分から展示に関する意見をまとめるのに手伝う、とは言ったものの和也はやはり緊張がする。今、この家庭科室にいるのは和也と凛、和多利以外には四人いた。四人とも手芸部の部員で顧問の先生は出払っているという話を凛から既に聞いていた。
改めて思うけど、緊張が凄い。部員は全員女子、という訳ではなく二人男子ではあるのでそういった意味での緊張は無いのだが、上手い事行けるのかという部分でやはり緊張が出ている。
けれど、凛にああ言った以上はちゃんと上手くいくように頑張らねば……という気持ちが和也の中でもあった。あんな事を言って、役に立たないっていう結果は彼女に申し訳が立たない。
龍との勉強会も、今日はわざわざやらないという形で来ている。……ちなみに次の勉強会はいつもより長くやる、と言ったために龍からはブーイングを喰らっていたが。
とにかく、やると言った以上はしっかりやらないと、と思った和也だったが……。
この後、凛がああやって悩む理由を思い知らされる事になる。
「こんな地味なのは駄目でしょ! こうして、もうちょい目立たせないと……」
「いやいや、いくらなんでもそんな手間がかかる事が高校生の部活で出来る訳ない! それならば……」
……何か一つの案が出ると、すぐに意見の対立が起きて結果として有耶無耶なまま次の案が出る、というのを何度繰り返したのだろうか。
凛もあわあわ、と喧嘩が起きそうなのを制止している様子で結構大変だ。和多利を含めた五人の部員は文化祭の展示に前向きなのは良い事なのだが、それが裏目に出て結果として未だに決まらない……という事になっている。
「あたしは、なんかもうちょっとポップな感じで行きたいけどな~手芸部っぽいって感じで言い訳だし」
「手芸部っぽいって何……。でも、これだと逆にワンパターンっていうかさ」
また、ここでも案が出てくるがそれでもやっぱり意見の対立が起き始める。あの星を多く盛ったタイプの展示仕様を挙げた和多利の案もやはり、また同じ様に有耶無耶となっていく。
結局のところ、今回の展示に関する話し合いでは何も決まらずに終わってしまった。
「ごめん伊豆野さん! 役に立てなくて……」
和也は終わってすぐに、凛に謝る。
「あ……別にいいよ。それに、高野くんが居たお陰かいつもよりは言い合いが減ったかなって思うし」
凛のフォローが和也の心にズキリと少し、痛みが産まれる。どうやら、凛によるとこれまでの話し合いでは今日以上の対立が起きたのだそうだ。意見の対立が起きる度に凛と共に仲裁に入ったり、フォローに入ったりで和也も介入してくれたお陰で凛の負担が和らいだという話だそうだが、結局の所結論に至る事は無かった。
「どうしたら、いいんだろうか……あれ」
「うん。本当に困っているんだよね……皆前向きなのは良いんだけど」
凛はかなり悩んでいる様子だった。部員全員が催しに対して前向きで、けれど意見としては全員が割れる……。今回の話し合いでは、平行線で話が進まない事を実感せざるおえない結果となってしまった。
翌日、龍は大分疲弊している……風に見せながらもしっかり問題に食らいついていた。現状、成績は今までと比べて大幅に改善している傾向だ。赤点回避の可能性も充分過ぎるくらい高まっていた。
だからこそ、この勉強会で龍の成績向上を行わせたい。……けれど、和也は一方で昨日の事が引っ掛かり続けている。
「俺が手伝って、皆の意見がまとまるようにしたいって」
「それは……嬉しい申し出だけど、流石に助けてばかりじゃ」
「いや、伊豆野さんだって……龍周りで色々助けてくれたし、お互い様だって」
それに、龍が凛との会話等を見て少しややこしい事になった時、凛は助けてくれた。和也はそんな事もあったから恩返しみたいな形で手芸部の文化祭の展示が上手くいくように手伝いをしたかった。
「そっか……それもそう、だね」
凛は、少し顔を俯かせるとボソボソと独り言をしている。そして、顔を上げて和也を見た時、笑顔を見せた彼女は
「それじゃあ、よろしくお願いします」
そう言って和也の申し出を受け入れた。
*
「それじゃあ、今日も展示について話し合いするよ~」
「ぶちょ~。今日は高野先輩も連れてきてるんですか?」
和多利が、何故か今日その場にいる和也について触れてくる。今までいなかったのに急にいたらその反応になるのは仕方ないだろう。和也も同じ反応をする自信がある。
「もう! 高野くんは、手伝ってくれるって話で来てもらっているんだから、入ちゃんも変なからかいをしないように?」
「は~い」
少し面倒そうな様子だったが……とりあえず、和多利は素直に聞き入れていた。
自分から展示に関する意見をまとめるのに手伝う、とは言ったものの和也はやはり緊張がする。今、この家庭科室にいるのは和也と凛、和多利以外には四人いた。四人とも手芸部の部員で顧問の先生は出払っているという話を凛から既に聞いていた。
改めて思うけど、緊張が凄い。部員は全員女子、という訳ではなく二人男子ではあるのでそういった意味での緊張は無いのだが、上手い事行けるのかという部分でやはり緊張が出ている。
けれど、凛にああ言った以上はちゃんと上手くいくように頑張らねば……という気持ちが和也の中でもあった。あんな事を言って、役に立たないっていう結果は彼女に申し訳が立たない。
龍との勉強会も、今日はわざわざやらないという形で来ている。……ちなみに次の勉強会はいつもより長くやる、と言ったために龍からはブーイングを喰らっていたが。
とにかく、やると言った以上はしっかりやらないと、と思った和也だったが……。
この後、凛がああやって悩む理由を思い知らされる事になる。
「こんな地味なのは駄目でしょ! こうして、もうちょい目立たせないと……」
「いやいや、いくらなんでもそんな手間がかかる事が高校生の部活で出来る訳ない! それならば……」
……何か一つの案が出ると、すぐに意見の対立が起きて結果として有耶無耶なまま次の案が出る、というのを何度繰り返したのだろうか。
凛もあわあわ、と喧嘩が起きそうなのを制止している様子で結構大変だ。和多利を含めた五人の部員は文化祭の展示に前向きなのは良い事なのだが、それが裏目に出て結果として未だに決まらない……という事になっている。
「あたしは、なんかもうちょっとポップな感じで行きたいけどな~手芸部っぽいって感じで言い訳だし」
「手芸部っぽいって何……。でも、これだと逆にワンパターンっていうかさ」
また、ここでも案が出てくるがそれでもやっぱり意見の対立が起き始める。あの星を多く盛ったタイプの展示仕様を挙げた和多利の案もやはり、また同じ様に有耶無耶となっていく。
結局のところ、今回の展示に関する話し合いでは何も決まらずに終わってしまった。
「ごめん伊豆野さん! 役に立てなくて……」
和也は終わってすぐに、凛に謝る。
「あ……別にいいよ。それに、高野くんが居たお陰かいつもよりは言い合いが減ったかなって思うし」
凛のフォローが和也の心にズキリと少し、痛みが産まれる。どうやら、凛によるとこれまでの話し合いでは今日以上の対立が起きたのだそうだ。意見の対立が起きる度に凛と共に仲裁に入ったり、フォローに入ったりで和也も介入してくれたお陰で凛の負担が和らいだという話だそうだが、結局の所結論に至る事は無かった。
「どうしたら、いいんだろうか……あれ」
「うん。本当に困っているんだよね……皆前向きなのは良いんだけど」
凛はかなり悩んでいる様子だった。部員全員が催しに対して前向きで、けれど意見としては全員が割れる……。今回の話し合いでは、平行線で話が進まない事を実感せざるおえない結果となってしまった。
翌日、龍は大分疲弊している……風に見せながらもしっかり問題に食らいついていた。現状、成績は今までと比べて大幅に改善している傾向だ。赤点回避の可能性も充分過ぎるくらい高まっていた。
だからこそ、この勉強会で龍の成績向上を行わせたい。……けれど、和也は一方で昨日の事が引っ掛かり続けている。



