あの時の続きを見た和也は、乾いた笑い声を出す事しかできなかった。もしかしたら昨日の話が引き金となって久々に見たのかもしれない、と思った。
「私のお姉ちゃん――十年前に亡くなったんだ、病気で」
凛から明かされたその事に、和也はどう答えればいいのかがわからなかった。凛には、姉がいた。けれど、その姉は十年前に病気で――
「あ……その……」
「えへへっ……いいの。結構前の話だし、別に気になる事があったら聞いてもらってもいいから」
彼女は、そうは言うものの和也から見ればどう接すればいいのかが困る話だった。その話をする上で、そんな質問みたいな事をするのはとてもはばかられた。
「いや……大丈夫。気にしないで良いよ」
後から考えたら、急過ぎる話で気が動転している和也を見て凛がフォローに回ろうとああいう事を言ってくれたのかとも思う。大分、強引気味な感じはするけれど。
あの後は、いくつか話をした後に解散という形になった。その中で凛はこんな事を言っていた。
「もうすぐ十月になるから、そろそろ本格的に方針を定めないと間に合わないと思うから皆が空いている日にどういう作品を作るか話し合う事になったの」
そうだ。
文化祭も、もうすぐだ。
「龍、今回は結構良いんじゃないか?」
「マジ?! どれくらい、どれくらい!?」
和也が褒めたのに反応して、龍は真っ先に食らいつく。顔が大分近いのが困る所だ。
「えーと……これなら赤点回避は間違いないってくらい」
「やった! じゃあこのまま……」
「まあ、油断した結果赤点回避できなかったら駄目だから続行だけどな」
だよな~、と少し龍は項垂れる。けれど、友人の話も加味するとここ最近の龍は勉強を相当頑張っている様子で実際、今日のやった問題を見て見るとちょっと前とは比較にならない……少し言い過ぎではあるが、それでも成績は改善傾向にあったのは間違いなかった。
和也としてはここまで付き合った以上、赤点回避のチャンスを逃したくはない。
だから、今日はいつも以上に龍の成績改善のための勉強会に気合が入っていた。
「それじゃあ次の問題も解いてくから」
「えぇ?! 立て続けにそんな解けねえよ!」
「泣き言は終わってからにしてくれ、じゃあ次……」
とにかく、密度を強くして早めに終わらせる。そんな調子で続けて今日は予定より少し多くの学習を龍に教え込む事が出来たと思う。
図書室を出て行く龍を見送った後、和也は次の勉強会の予習をしてから自分も図書室を出て行った。
今日は家庭科室に行く予定はないし時間的にも、もう部活動は終わりの方であるから行ってもしょうがないが……和也はなんとなく、家庭科室の前を通ってみようと考えた。
そして、家庭科室前が近づいてきた時廊下に人影がある事に気づく。
「はあ……」
その人、はため息をついて窓の外を眺めている様子だった。肘を付けて。
和也はそのまま歩いて、その人物のすぐ近くに来てそれが誰なのかに気づく。
「伊豆野さん……?」
「……あ、高野くん」
凛は和也に気づくとこちら側に振り向いて、笑顔を見せてはいるのだが……その顔は少し疲れがあったように見えた。
「実はね、何度か話し合いを進めているけど中々決まらなくて」
凛が話した事は、文化祭の手芸部の展示の事だ。
今月末には準備を終えていないと文化祭には間に合わないのだが、どうやらどういう展示にするかが未だに決まらないようだ。
「皆、色々な案を出してくれはするんだけど、色々問題があって……例えば、時期的なものとか」
「時期的に、というと……」
「そう。今からやるには大掛かり過ぎて決められた期間では準備できないものが多いの。特に、一カ月も切っている中だと確実に間に合わないってものが多くて……」
つまり、部員から見るとやはり規模の大きいものが良いという事なのだろうか。
「それにしても、何故そんなに決まらないんだ?」
「……実は、それ以外でも決まらないのって部員の中で意見割れもあって。というより、決まらない一番の原因はそれではあるのだけど」
なんとなく、とは思っていたもののやはり意見割れが一番の原因のようだ。
「準備の難しいものの提案が多い事と、そこで意見が割れる事が中々決まらないって原因なの……はぁ」
凛はまた、ため息をついている。彼女がここでため息をつく理由はなんとなくわかる。だから、和也が言う事は迷わなかった。
「それじゃあ、次の話し合い俺も参加していい?」
「……えっ? 急にどうして?」
多分、凛は自分が上手くまとめられていない、部長としての務めを果たせてないも当然なこの状況に結構悩んでいると思う。それは今までの付き合いから見ても、和也はわかっているつもりだ。
「私のお姉ちゃん――十年前に亡くなったんだ、病気で」
凛から明かされたその事に、和也はどう答えればいいのかがわからなかった。凛には、姉がいた。けれど、その姉は十年前に病気で――
「あ……その……」
「えへへっ……いいの。結構前の話だし、別に気になる事があったら聞いてもらってもいいから」
彼女は、そうは言うものの和也から見ればどう接すればいいのかが困る話だった。その話をする上で、そんな質問みたいな事をするのはとてもはばかられた。
「いや……大丈夫。気にしないで良いよ」
後から考えたら、急過ぎる話で気が動転している和也を見て凛がフォローに回ろうとああいう事を言ってくれたのかとも思う。大分、強引気味な感じはするけれど。
あの後は、いくつか話をした後に解散という形になった。その中で凛はこんな事を言っていた。
「もうすぐ十月になるから、そろそろ本格的に方針を定めないと間に合わないと思うから皆が空いている日にどういう作品を作るか話し合う事になったの」
そうだ。
文化祭も、もうすぐだ。
「龍、今回は結構良いんじゃないか?」
「マジ?! どれくらい、どれくらい!?」
和也が褒めたのに反応して、龍は真っ先に食らいつく。顔が大分近いのが困る所だ。
「えーと……これなら赤点回避は間違いないってくらい」
「やった! じゃあこのまま……」
「まあ、油断した結果赤点回避できなかったら駄目だから続行だけどな」
だよな~、と少し龍は項垂れる。けれど、友人の話も加味するとここ最近の龍は勉強を相当頑張っている様子で実際、今日のやった問題を見て見るとちょっと前とは比較にならない……少し言い過ぎではあるが、それでも成績は改善傾向にあったのは間違いなかった。
和也としてはここまで付き合った以上、赤点回避のチャンスを逃したくはない。
だから、今日はいつも以上に龍の成績改善のための勉強会に気合が入っていた。
「それじゃあ次の問題も解いてくから」
「えぇ?! 立て続けにそんな解けねえよ!」
「泣き言は終わってからにしてくれ、じゃあ次……」
とにかく、密度を強くして早めに終わらせる。そんな調子で続けて今日は予定より少し多くの学習を龍に教え込む事が出来たと思う。
図書室を出て行く龍を見送った後、和也は次の勉強会の予習をしてから自分も図書室を出て行った。
今日は家庭科室に行く予定はないし時間的にも、もう部活動は終わりの方であるから行ってもしょうがないが……和也はなんとなく、家庭科室の前を通ってみようと考えた。
そして、家庭科室前が近づいてきた時廊下に人影がある事に気づく。
「はあ……」
その人、はため息をついて窓の外を眺めている様子だった。肘を付けて。
和也はそのまま歩いて、その人物のすぐ近くに来てそれが誰なのかに気づく。
「伊豆野さん……?」
「……あ、高野くん」
凛は和也に気づくとこちら側に振り向いて、笑顔を見せてはいるのだが……その顔は少し疲れがあったように見えた。
「実はね、何度か話し合いを進めているけど中々決まらなくて」
凛が話した事は、文化祭の手芸部の展示の事だ。
今月末には準備を終えていないと文化祭には間に合わないのだが、どうやらどういう展示にするかが未だに決まらないようだ。
「皆、色々な案を出してくれはするんだけど、色々問題があって……例えば、時期的なものとか」
「時期的に、というと……」
「そう。今からやるには大掛かり過ぎて決められた期間では準備できないものが多いの。特に、一カ月も切っている中だと確実に間に合わないってものが多くて……」
つまり、部員から見るとやはり規模の大きいものが良いという事なのだろうか。
「それにしても、何故そんなに決まらないんだ?」
「……実は、それ以外でも決まらないのって部員の中で意見割れもあって。というより、決まらない一番の原因はそれではあるのだけど」
なんとなく、とは思っていたもののやはり意見割れが一番の原因のようだ。
「準備の難しいものの提案が多い事と、そこで意見が割れる事が中々決まらないって原因なの……はぁ」
凛はまた、ため息をついている。彼女がここでため息をつく理由はなんとなくわかる。だから、和也が言う事は迷わなかった。
「それじゃあ、次の話し合い俺も参加していい?」
「……えっ? 急にどうして?」
多分、凛は自分が上手くまとめられていない、部長としての務めを果たせてないも当然なこの状況に結構悩んでいると思う。それは今までの付き合いから見ても、和也はわかっているつもりだ。



