最近、というか一年前くらいからいじめられている気がします。
まあ、そのわけに心当たりは、あるっちゃある______いや、そこそこ______やっぱり、かなりあるような_____気はするわけですが、心当たりのある人の周りにぴったりくっついて離れないような人たちまで何かしら言ってくるのですから、文句を言う権利ぐらいあると思うのです。
しかも、あいつらは根っからのいじめっ子です。だって、一昨年まで大親友だった人を、いきなり無視し出すような奴ですから。
わたしが嫌いなら、もっとずばっと「嫌い」くらい言って欲しいところなのですが、性格も頭も悪い_____おっと悪口でした、そんな人たちは、半分悪口を言いたがっているようなものなのでしょう。
例えば、休み時間。呼び出されて、色々言われます。
例えば、授業中。私の名前が呼ばれている気がします。
例えば、部活中。意見を言えば、「うざい」やらなんやら言われます。
まあ、私は「何?」ととぼけたり、「私がどうしたの?」と喋りかけたり、「ごめんなさい。でも、うざくて何が悪いのかしら?」と返したりして乗り切っているのですが、気づかないふりはかなり気力がいるので、やめてほしいです。
とか強がってはいますが、精神的にはややきつく、トイレで泣いたり、はほぼ日常です。
しかし、そんな私の心も、あの幽霊(の幻)のことでいっぱいになり、こんな事なんかポイっと捨ててしまいました。
(周りには少なくとも1人2人の歩行者がいたわけよね。あの幽霊はわたしの見間違いだとしたら、『1人で会話したり怯えたりしてるわー。変な人だなー』って思われてたに違いない。あーもう、どうしようっ!)
そんな不安にかられながらも、心の奥底には
(もし、あの幽霊が本当にいたなら、友達になってくれるかな)
という希望を沈めたまま、捨てきれずにいる自分がいました。
もちろん、そんなことを考えていては、勉強なんか頭に入ってこないということは、考えもしないまま。
⚡︎
そして部活が始まりました。今日は、例の心当たりの人とペアにさせられて、気分は最悪でした。
相手も、表では
「よろしくねー、ゆーちゃん」
と言っているのですが、彼女の顔には、裏では「うざ」「最悪」と思っていることが、まるっきり書いてありました。
しかし、しばらくすると、そんな私の心も
(もしかしたら、今日の帰りに、あの幽霊に出会えるかもしれない)
という期待に埋め尽くされ、そんな考えうる限り最悪の出来事すら忘れ去ってしまいました。だからあの幽霊には少しばかり感謝しています。まぁ、昼に話を聞いていなかったせいで、鬼のように怖い先生に般若のように怖い顔で怒られた事は忘れていませんけど。
⚡︎
その日の帰り。私は、あの幽霊をまた見つけました。幽霊は、細い路地裏に、そっと佇んでいました。何か考えていそうな顔だったので、悪いなと思いながらも、興奮を抑えることができず、近寄って、ちょいちょいっ、と肩をつついてみました。
しかし、つつこうとした指先は、幽霊の肩を貫通してしまいました。
びっくりした私は、手を引っ込めて思わず息を呑みました。
しかし、幽霊はこちらに気付く様子もありません。
そこで、私は、
「何してるの?」
と声をかけました。
幽霊は、透明な肩をビクッと震わせて、辺りを見回します。そして、こちらに気づいた瞬間発した言葉がこれなのですから、ひどいと思いませんか?
「なんだ、お前か」
「なんだとは何よ!」
幽霊は、だるそうに溜め息をついた後、
「なんで、来たんだよ」
「なんでって、なんでまた」
また、ため息をひとつ。今度は、余裕のない様子で告げたのです。
「だから、何で、昨日びびって逃げ出しやがったお前がここにいるのかって聞いてるんだよ!」
…沈黙が、辺りを包みました。私の本心は、こう。
(会いたかった、から)
でも、そんな恥ずかしいことはもちろん言えるわけがありません。どう言おうか迷っている間に、
「ほらな!お前も、どうせからかってくる奴らの一員なんだろ!そうなら、さっさとどっか行っちま」
「やめて!」
「理由なら」
なぜでしょう。目は熱くかすみ、さっきまで言いたくなかった事が、なぜかすんなり出てきました。
「理由なら言えるよ。あんたに友達になってほしかったから」
「…嘘だ。何泣いてんだよ。じゃあ、この沈黙は何だったんだ。理由を言えよ!言えないだろ!」
「言いにくかったから。それだけ」
「嘘だ!嘘に決まってる!」
その時の彼は、顔がひきつっていました。
嘘じゃないんだよ。だって、わたしは…
「いじめられてるから。友達なんて一人もいない、いつも失敗しちゃうから!わたしだって分かってるの、あんたみたいのと友達になるなんて、正気の沙汰じゃあない」
「それがどうした?」
「へ」
思わず、変な声が出ました。そんなふうに軽く受け止められたら、困ってしまう。わたしは…
(悲劇のプリンセスのままで______いられなくなっちゃう)
わたしは、たったいま染みだらけになったTシャツを見下ろしながら、何故か体が温まるような感覚を覚えました。多分それは、ほっとしたせいでしょう。本当は、プリンセスでも、ゴミクズでも、空気の読めない役立たずの風見鶏でもなく、「ただの人間」として扱ってくれる存在を、ずっと待ち望んでいたのかもしれません。
まあ、そのわけに心当たりは、あるっちゃある______いや、そこそこ______やっぱり、かなりあるような_____気はするわけですが、心当たりのある人の周りにぴったりくっついて離れないような人たちまで何かしら言ってくるのですから、文句を言う権利ぐらいあると思うのです。
しかも、あいつらは根っからのいじめっ子です。だって、一昨年まで大親友だった人を、いきなり無視し出すような奴ですから。
わたしが嫌いなら、もっとずばっと「嫌い」くらい言って欲しいところなのですが、性格も頭も悪い_____おっと悪口でした、そんな人たちは、半分悪口を言いたがっているようなものなのでしょう。
例えば、休み時間。呼び出されて、色々言われます。
例えば、授業中。私の名前が呼ばれている気がします。
例えば、部活中。意見を言えば、「うざい」やらなんやら言われます。
まあ、私は「何?」ととぼけたり、「私がどうしたの?」と喋りかけたり、「ごめんなさい。でも、うざくて何が悪いのかしら?」と返したりして乗り切っているのですが、気づかないふりはかなり気力がいるので、やめてほしいです。
とか強がってはいますが、精神的にはややきつく、トイレで泣いたり、はほぼ日常です。
しかし、そんな私の心も、あの幽霊(の幻)のことでいっぱいになり、こんな事なんかポイっと捨ててしまいました。
(周りには少なくとも1人2人の歩行者がいたわけよね。あの幽霊はわたしの見間違いだとしたら、『1人で会話したり怯えたりしてるわー。変な人だなー』って思われてたに違いない。あーもう、どうしようっ!)
そんな不安にかられながらも、心の奥底には
(もし、あの幽霊が本当にいたなら、友達になってくれるかな)
という希望を沈めたまま、捨てきれずにいる自分がいました。
もちろん、そんなことを考えていては、勉強なんか頭に入ってこないということは、考えもしないまま。
⚡︎
そして部活が始まりました。今日は、例の心当たりの人とペアにさせられて、気分は最悪でした。
相手も、表では
「よろしくねー、ゆーちゃん」
と言っているのですが、彼女の顔には、裏では「うざ」「最悪」と思っていることが、まるっきり書いてありました。
しかし、しばらくすると、そんな私の心も
(もしかしたら、今日の帰りに、あの幽霊に出会えるかもしれない)
という期待に埋め尽くされ、そんな考えうる限り最悪の出来事すら忘れ去ってしまいました。だからあの幽霊には少しばかり感謝しています。まぁ、昼に話を聞いていなかったせいで、鬼のように怖い先生に般若のように怖い顔で怒られた事は忘れていませんけど。
⚡︎
その日の帰り。私は、あの幽霊をまた見つけました。幽霊は、細い路地裏に、そっと佇んでいました。何か考えていそうな顔だったので、悪いなと思いながらも、興奮を抑えることができず、近寄って、ちょいちょいっ、と肩をつついてみました。
しかし、つつこうとした指先は、幽霊の肩を貫通してしまいました。
びっくりした私は、手を引っ込めて思わず息を呑みました。
しかし、幽霊はこちらに気付く様子もありません。
そこで、私は、
「何してるの?」
と声をかけました。
幽霊は、透明な肩をビクッと震わせて、辺りを見回します。そして、こちらに気づいた瞬間発した言葉がこれなのですから、ひどいと思いませんか?
「なんだ、お前か」
「なんだとは何よ!」
幽霊は、だるそうに溜め息をついた後、
「なんで、来たんだよ」
「なんでって、なんでまた」
また、ため息をひとつ。今度は、余裕のない様子で告げたのです。
「だから、何で、昨日びびって逃げ出しやがったお前がここにいるのかって聞いてるんだよ!」
…沈黙が、辺りを包みました。私の本心は、こう。
(会いたかった、から)
でも、そんな恥ずかしいことはもちろん言えるわけがありません。どう言おうか迷っている間に、
「ほらな!お前も、どうせからかってくる奴らの一員なんだろ!そうなら、さっさとどっか行っちま」
「やめて!」
「理由なら」
なぜでしょう。目は熱くかすみ、さっきまで言いたくなかった事が、なぜかすんなり出てきました。
「理由なら言えるよ。あんたに友達になってほしかったから」
「…嘘だ。何泣いてんだよ。じゃあ、この沈黙は何だったんだ。理由を言えよ!言えないだろ!」
「言いにくかったから。それだけ」
「嘘だ!嘘に決まってる!」
その時の彼は、顔がひきつっていました。
嘘じゃないんだよ。だって、わたしは…
「いじめられてるから。友達なんて一人もいない、いつも失敗しちゃうから!わたしだって分かってるの、あんたみたいのと友達になるなんて、正気の沙汰じゃあない」
「それがどうした?」
「へ」
思わず、変な声が出ました。そんなふうに軽く受け止められたら、困ってしまう。わたしは…
(悲劇のプリンセスのままで______いられなくなっちゃう)
わたしは、たったいま染みだらけになったTシャツを見下ろしながら、何故か体が温まるような感覚を覚えました。多分それは、ほっとしたせいでしょう。本当は、プリンセスでも、ゴミクズでも、空気の読めない役立たずの風見鶏でもなく、「ただの人間」として扱ってくれる存在を、ずっと待ち望んでいたのかもしれません。



