「､､､､､､」
　遠くで怒鳴り声が聞こえ、誰かに肩を叩かれる。
　昨日夜遅くまでゲームをしていたおかげで寝不足な僕は気づかないふりをして眠り続ける。
「河上！！」
　今度は近くで自分の名前を叫ばれた。驚いて机から顔を上げると目の前に担任の武田先生が立っている。突然夢から現実に引き戻され、状況が理解出来ない僕はエラーを起こしたように先生を見つめたまま固まってしまった。騒がしかった教室内は一気に沈黙に包まれ、皆の視線が僕と先生に集まる。
　武田先生はハァーと一呼吸をおき、静かに口を開いた。
「課題の再提出は今日までだから終わってないなら放課後残って終わらせろよ。」
　一昨日の授業でクラスで僕だけが英語の課題を出しておらず、武田先生に再提出期間を設けられていた。てっきり居眠りのことを説教されると思っていた僕は呆気に取られ曖昧な返事をする。先生はそれで満足したのかそのまま何も言わずに教卓へ戻って行った。
さっきまで静かだった教室も先生の想定外の行動にざわつき始める。それもそのはずで武田先生の説教はとにかく長いことで有名なのだ。この間も隣のクラスの人が授業に少し遅刻しただけで30分近くも怒っていた程で、そんな先生が何も言わずに戻って行くことはまず無い。だが当の本人は何事も無かったかのようにホームルームの続きを始めている。
　 僕はいつもと様子の違う先生に少し気味悪さを感じつつも説教がないことに安堵し、机に頬杖を付きながら残りの連絡を聞き流す。