「それでは今から、大繩の練習を始めます!」
秋晴れの空の下。校庭に集まった俺たちに向かって、西条が明朗な声を響かせた。後ろで括ったポニーテールを揺らして、リーダーとして前に立っている。手には長めの縄を提げていた。
うげ、早速大繩かよ……と思いながら辺りを見渡す。クラスメイトの大半が憂鬱を浮かべていた。どうやら西条以外の生徒は全員、大繩へのモチベーションは低いらしい。まあそりゃそうだろう。
「質問なんだけど。大繩って、一人跳んだら抜けて、また次の人が入るやつ?それとも、最初から全員並んで跳ぶやつ?」
男子から質問が挙がる。
「ごめん、伝えてなかったね。今回の体育祭では、二つ目の方をやります!」
西条が笑顔で答えた。しかしそれとは対照的に、みんなの表情に影が落ちた。
「うわ……ダルい方かよ」
「えぇ~私絶対引っかかっちゃうよぉ」
ぷつぷつと泡立つ熱湯のように、不満の声が漏れた。だが西条はフッと不敵な笑みを浮かべると、どこか誇らしそうに自分の腰に手を当てた。
「私は、断然こっちの跳び方が良いと思うわ!だって、一人跳んでは抜けていくよりも、みんなで足とリズムを揃えて跳んだ方が、一体感があるもの!バラバラだった心を一つにして、一回でも多く跳べるように汗を流す……まさに体育祭にピッタリの競技よ!」
西条は祈るように手を組んで、純真な瞳を輝かせた。
……随分とご立派なことを言うもんだ。どうせ心の中では、そんなこと微塵も思ってないくせに。一度騙された経験があるから、俺にはよく分かるぞ。
「なあ政貴。一緒に縄回しやらね?」
一人で西条への不信感を募らせていると、笹原が囁いてきた。
「縄回し?言っとくけど、跳ぶ人と同じか、それより体力いるぞ」
「え、そうなの?」
笹原が首を傾げた。大繩の回し役は楽そうに見えて結構キツい。腕だけじゃなく全身を使って回す上に、跳ぶ人のリズムも考えないといけない。陸上部時代、何度かアップでやらされたから知っていた。
「まあ、どうにかなるっしょ!」
しかし笹原は、俺の忠告など気にも留めなかった。思い立ったが吉日とばかりに、西条に向かって手を挙げる。もうどうなっても知らねえからな。
秋晴れの空の下。校庭に集まった俺たちに向かって、西条が明朗な声を響かせた。後ろで括ったポニーテールを揺らして、リーダーとして前に立っている。手には長めの縄を提げていた。
うげ、早速大繩かよ……と思いながら辺りを見渡す。クラスメイトの大半が憂鬱を浮かべていた。どうやら西条以外の生徒は全員、大繩へのモチベーションは低いらしい。まあそりゃそうだろう。
「質問なんだけど。大繩って、一人跳んだら抜けて、また次の人が入るやつ?それとも、最初から全員並んで跳ぶやつ?」
男子から質問が挙がる。
「ごめん、伝えてなかったね。今回の体育祭では、二つ目の方をやります!」
西条が笑顔で答えた。しかしそれとは対照的に、みんなの表情に影が落ちた。
「うわ……ダルい方かよ」
「えぇ~私絶対引っかかっちゃうよぉ」
ぷつぷつと泡立つ熱湯のように、不満の声が漏れた。だが西条はフッと不敵な笑みを浮かべると、どこか誇らしそうに自分の腰に手を当てた。
「私は、断然こっちの跳び方が良いと思うわ!だって、一人跳んでは抜けていくよりも、みんなで足とリズムを揃えて跳んだ方が、一体感があるもの!バラバラだった心を一つにして、一回でも多く跳べるように汗を流す……まさに体育祭にピッタリの競技よ!」
西条は祈るように手を組んで、純真な瞳を輝かせた。
……随分とご立派なことを言うもんだ。どうせ心の中では、そんなこと微塵も思ってないくせに。一度騙された経験があるから、俺にはよく分かるぞ。
「なあ政貴。一緒に縄回しやらね?」
一人で西条への不信感を募らせていると、笹原が囁いてきた。
「縄回し?言っとくけど、跳ぶ人と同じか、それより体力いるぞ」
「え、そうなの?」
笹原が首を傾げた。大繩の回し役は楽そうに見えて結構キツい。腕だけじゃなく全身を使って回す上に、跳ぶ人のリズムも考えないといけない。陸上部時代、何度かアップでやらされたから知っていた。
「まあ、どうにかなるっしょ!」
しかし笹原は、俺の忠告など気にも留めなかった。思い立ったが吉日とばかりに、西条に向かって手を挙げる。もうどうなっても知らねえからな。

