週が明けて月曜。体育祭準備期間に突入した美保高は、今日から五日間、授業は午前中のみとなる。空いた午後の時間は、全て体育祭の練習に費やされるのだ。
「笹原、早く着替えないと置いてくぞ」
「ちょっ、待てよ政貴!俺まだ弁当残ってんだよ!」
体操着に着替え終わった俺は、笹原を見下ろした。ついさっき放送室から戻ってきた笹原は、自分の席で弁当をかっ食らっていた。教室に残っているのは俺たちを含めて数人。すでに大半の生徒が校庭に降りていた。
「何せかせかしてんだ、アホか」
頭上から声がした。振り向くと、上垣が立っていた。こちらを見下ろす険しい瞳に、笹原がゴクッと音を立てて卵焼きを飲み込んだ。
「上垣は、練習に参加しないのか」
俺は思い切って訊ねた。上垣は制服のままだった。
「あたりめーだろ。なんで怪我してんのに、お前らのお遊びに付き合うんだよ」
そう言って、上垣は自分の右拳に視線を落とした。そこには真っ白なテーピングが巻かれていた。たしか、一年ほど前に試合で痛めて、それ以来思うようにボクシングが出来ていないと聞いた。
「西条が怒るぞ」
「はっ。あんな脳内花畑女、知るかよ。一人でピクニックでもしてんのがお似合いだぜ」
「ぶっ!」
上垣の言葉がツボに入ったのか、笹原がお茶を噴き出した。するとそれを見た上垣が呆れたように肩を竦めた。なんだこいつ、意外に冗談とか言うのか。
「ま、俺はサボらせてもらうわ。んーと、久保だっけ?お前、リレー選ばれてたよな?」
「いやまあ……一応、な」
歯切れ悪く答える。結局、辞退の件は言えずじまいだった。
「だよな。悪りいけど、俺の分も頼んだわ」
そう言って、同じくリレー走者の上垣は教室から出ていった。具体的に何をどう頼まれたのかは不明だが、面倒事を押し付けられたことは分かった。
胸の中で、上垣に対する不満が膨らむ。クソ、完全に舐められてる。なんで辞退したくてたまらない俺が、お前の分まで走らないといけないんだ。そんなの、絶対に御免だ。
「なんだよ政貴。上垣と仲良さげじゃん」
「全然良くない。むしろ、たった今アイツが嫌いになった」
笹原に八つ当たるように、俺は言葉を吐き捨てた。
「笹原、早く着替えないと置いてくぞ」
「ちょっ、待てよ政貴!俺まだ弁当残ってんだよ!」
体操着に着替え終わった俺は、笹原を見下ろした。ついさっき放送室から戻ってきた笹原は、自分の席で弁当をかっ食らっていた。教室に残っているのは俺たちを含めて数人。すでに大半の生徒が校庭に降りていた。
「何せかせかしてんだ、アホか」
頭上から声がした。振り向くと、上垣が立っていた。こちらを見下ろす険しい瞳に、笹原がゴクッと音を立てて卵焼きを飲み込んだ。
「上垣は、練習に参加しないのか」
俺は思い切って訊ねた。上垣は制服のままだった。
「あたりめーだろ。なんで怪我してんのに、お前らのお遊びに付き合うんだよ」
そう言って、上垣は自分の右拳に視線を落とした。そこには真っ白なテーピングが巻かれていた。たしか、一年ほど前に試合で痛めて、それ以来思うようにボクシングが出来ていないと聞いた。
「西条が怒るぞ」
「はっ。あんな脳内花畑女、知るかよ。一人でピクニックでもしてんのがお似合いだぜ」
「ぶっ!」
上垣の言葉がツボに入ったのか、笹原がお茶を噴き出した。するとそれを見た上垣が呆れたように肩を竦めた。なんだこいつ、意外に冗談とか言うのか。
「ま、俺はサボらせてもらうわ。んーと、久保だっけ?お前、リレー選ばれてたよな?」
「いやまあ……一応、な」
歯切れ悪く答える。結局、辞退の件は言えずじまいだった。
「だよな。悪りいけど、俺の分も頼んだわ」
そう言って、同じくリレー走者の上垣は教室から出ていった。具体的に何をどう頼まれたのかは不明だが、面倒事を押し付けられたことは分かった。
胸の中で、上垣に対する不満が膨らむ。クソ、完全に舐められてる。なんで辞退したくてたまらない俺が、お前の分まで走らないといけないんだ。そんなの、絶対に御免だ。
「なんだよ政貴。上垣と仲良さげじゃん」
「全然良くない。むしろ、たった今アイツが嫌いになった」
笹原に八つ当たるように、俺は言葉を吐き捨てた。

