ぼくと仁藤さんの出会いは、高校一年生のころに遡る。
 入学早々、同級生の名前をほとんど知らないときにあった委員会決め。
 ぼくは学級委員か風紀委員のどちらかになりたくて、学級委員を決めるときに誰も手を挙げなかったから、ぼくが挙げた。
 どちらもルールを決めたり守らせたりする仕事で、ぼくの性に合っていた。
 
 他に立候補者はおらず、ぼくの学級委員はすぐに決まった。
 
「よーし。じゃあ、男子は正田(しょうだ)に決定だ。後、女子は」
 
「はい」
 
 男子の学級委員がぼくに決まった直後、手を挙げたのが仁藤さんだった。
 
「仁藤さんが学級委員やるなら、俺男子の学級委員やります!」
 
「俺も!」
 
 仁藤さんが挙げた直後、さっきまで興味なさそうだった男子たちが、次々と学級委員に立候補を始めた。
 
「学級委員は正田でもう決まった。諦めろ」
 
「えー」
 
 でも、先生は決定を動かすことはなかった。
 ぼくとしても、後から手を挙げた人に取られるのは嫌だったので良かった。
 
 仁藤さんの第一印象は、長い髪の美人。
 仁藤さんを見たクラスの男子たちが色めき立つ程度には、整った容姿を持っていた。
 
「おーし。じゃあ、後の進行は正田と仁藤で頼む」
 
 先生が教壇近くのパイプ椅子に腰を下ろしたので、ぼくと仁藤さんは先生の代わりに教壇に立った。
 
「よろしくね、正田くん」
 
「こちらこそ、仁藤さん」
 
 それが、仁藤さんとの最初の会話。
 その後は、残された委員会を決めるために、淡々と司会を進めていった。
 先生が黒板に書いた委員会名の位置があまりにも高かったため、必然的にチョークを持つのがぼくで、口を開くのが仁藤さんになった。