告白された、親友の好きな人に

「仁藤さんに、告白したよ」
 
「おう。どうだった?」
 
「付き合うことに、なった」
 
「……そっか。おめでとう」
 
 仁藤さんとのことは、布藤にだけは話しておいた。
 布藤はお祝いの言葉をくれはしたが、その言葉を言うと同時にぼくから顔をそむけた。
 布藤がどんな顔をしていたかはわからない。
 
 ぼくに、恨み節を言うこともなかったし、クラスにぼくと仁藤さんが付き合ったと言いふらすこともなかった。
 ただただ、ぼくの隣に立つことがなくなり、時々やむを得ずに立つときも気まずそうにしていた。
 
「何? 布藤と喧嘩でもしたの?」
 
「喧嘩じゃないんだけど」
 
 ぼくは、心地よい居場所を一つ失った。
 もしかしたら数年後、この出来事を笑い話にして二人で話すことができるかもしれないが、今を生きているぼくにはよくわからない。
 大人だったら、わかるのだろうか。
 
「正くん?」
 
「あ、ごめん。考え事してた。」
 
 仁藤さんとは、相変わらず学校で話すことはないのだが、風紀委員の時に業務連絡を話すようになった。
 それを話したと呼んでいいのかはわからないが、ぼくも仁藤さんも学校に付き合ったという噂を流されたくはなかったので、これはこれでよかった。
 代わりに、家に帰ってからたくさんメッセージをして、たくさん通話をしている。
 休みの日には、学校の生徒がいないだろう場所まで電車で行って、デートを楽しんでいる。
 
 今、ぼくが一番居心地よい場所は、仁藤さんの隣になった。
 
 ちなみに、仁藤さんとの会話の中で、布藤の名前が出ることは一度もない。
 二人とも、意図的に避けている感じはしている。
 
「正くん! カフェ着いたよ!」
 
「うん。入ろうか」
 
 でも、人生はそんなものなのかもしれない。
 都合のいい想いだけを見て、都合の悪い想いをいったんどけて、目の前のことを全力で楽しむ。
 そんなご都合主義を、人は青春と呼んでいるのかもしれない。
 
 カフェの扉が開き、扉についた鐘がカランコロンと、景気よく音を鳴らした。