彼女の手を握って足を前に出す。でも飛ぶ勇気なんてなくて足を元の位置に戻す。
「やっぱりやめない?」
怖くなってきて彼女にそう言うと私の顔を見て笑いながら
「怖くなった?じゃあやめよっか。」
「いいの?」
「うん。いつでもできるしね。」
あぁ、、、いけない彼女が死にたいと言ったのを聞いて連れて行ってと言ったのは自分だ。なのに今さら怖気付いて、、それに彼女はいつでもできると言った。彼女にとって世界は、私はその程度なのだろう。でも私にとって彼女はこの世界の何よりも大切なのだ。彼女がいない世界など何の意味も無いのだ。でも彼女が死にたいと願うのを止めるほど私は出来た人間ではない。ならば、、止める事ができないなら、せめて一緒に落ちようと思ったのに。
もう何もかも捨てて思い残りなど何も無いはずなのに私の自分勝手な本能が飛ぶのを拒む。でも、きっと今飛ばなければ彼女は1人で死んでしまうかもしれない。明日にでも彼女が1人でいなくなってしまうと思うと次など来ないのだから私の本能など断ち切って飛ばなければならない気がしてきた。
私は彼女の手を自分の方にグッと近づけた
「わっ!ビックリした〜」
そう大袈裟な反応をして笑った彼女に
「今なら行ける気がする!!」
「アハハッ!急にやる気になったね。無理しなくても良いんだよ」
「ううん、いろいろ吹っ切れたんだ。無理してないし今ならワルツも踊れそう!」
「そっか、、」
彼女が小さい声で何かを言った気がした、聞き返そうと思ったが彼女が前を向いて大きく深呼吸を一回したあと手をギュッと握ったのを合図に地面を思いっきり蹴ってできる限り遠くまで飛んだ。もう後戻りできないように。飛べた瞬間何だやれば出来るじゃないかと自分を褒めると同時に彼女と一緒に飛べた喜びを全身に感じた。風が全身にブワッと当たる感触が空を飛んでいるみたいだ。そう思っていると、体が強く打ち付けられる。全身に痛みが来る血が私の周りを囲んでいく。ふと、彼女を見ると彼女は少し上から私を見下ろしていた。そう言えば彼女は飛べるんだった。そう思って見ていたら彼女が目を合わせた後微笑んで
「ありがとう。来てくれて」
返事をしようと口を開き言葉を出そうとするが口からはゴボゴボと音が鳴るだけだ。自分の血が広がっていく。まぶたが重くなってくる。
意識が朦朧とする中、私を見下ろして微笑む彼女を思い出す。
あぁ、、やっぱり彼女は、、、