書斎に来た真生は机のそばにある椅子へ座ってとライゼアから言われ腰かける。
 その後ライゼアは必要な書物を取りに本棚の方に向かった。
 扉向こうの通路側にはダランカルが見張りをしている。
 ナシェルはと云うと真生のための本を書物庫へ探しに行っていて、ここにいないのだ。

 そして現在、真生は机上に手を置き色々と考えていた。

 (この世界のことを学ぶか。どれだけの本を読まされるんだ?)

 そう考えていると【相当の数だと推測されます】そう脳裏に浮かび【頑張って学びましょう】のように書き込まれる。

 (だよなぁ……。そういえば、なんでこの世界に転移しなきゃいけなかったんだ?)

 そう問いかけると脳裏に【ワクワクするようなことを望んでいたのではなかったのですか?】のように浮かんできた。

 (そういえば、あの時そんなことを心の中で思った。まさか、それに反応して異世界に転移させたのか?)

 【はい、そうなります】と脳裏に書き込まれる。

 (いったいお前は何者なんだ? さっきは無の存在って言ってたけど)

 そう聞かれ【今の貴方のレベルでは教えることができません】と頭の中に書き込まれた。

 (またそれか……じゃあレベルをどのぐらい上げたら教えてくれる?)

 少し間をおき【魔王に覚醒できたら教えましょう。できたらの話しですが……クスッ】そう脳裏に浮かび上がる。

 (魔王に覚醒すればいいんだよな? ああ……やってやるよ。元の世界に帰ったって、どうせ家族も友人も彼女もいない。独り身だしな……)

 そう心の中で言い放った。だが、その直後むなしくなる。
 【ですが今は、どうでしょうか?】と問いかけられた。

 (信じられないくらい寂しくない……却ってうるさいくらいだ。それに勇者ではなく魔王か……普通じゃなくて面白い)

 【気にいって頂いたようでよかったです】そう脳裏に浮かび上がる。

 (それで俺を魔王に仕立て上げるのが元々の目的か?)

 そう問いかけると【そうですが仕立て上げるは違います】そう返ってきた。

 (仕立て上げるは違う……本気で俺を魔王にする気なのか?)

 【そうなります】と頭の中に浮かんでくる。

 (どうして俺なんだ?)

 そう聞くと【魔王に相応しい者は何名かいました】そう書き込まれた。
 その後【その中から転移させて魔王として覚醒させても問題ない者を数人に絞った中に貴方が居たのです】と浮かび上がる。

 (数名の中の一人……それなら俺じゃなくてもよくないか?)

 【先程も言いましたが。ワクワクしたいのですよね?】そう聞き返した。

 (ああ、だからって魔王って……そうだな。まあいいか……それはいいとして、もう一つ疑問がある。なんで能力が【掃除】なんだ?)

 そう問うと【クスッ……転移のギフトは、その人に合わせて与えられるもの。貴方には、そのギフトが合っているという事です】そう脳裏に書き込まれる。

 (要は、ガチャってことだよな?)

 ムッとして真生はそう聞き返した。だが返答はない。

 (返事がない……まあ、そういう事だからだろうな。だが、この変な能力のお陰でここまで乗り切れたんだ。……てか他にも聞きたい事があったんだけど)

 そう思うも真生は、まあまたあとで聞けばいいかと諦め苦笑する。
 そしてその後も真生は色々考えながら、ライゼアとナシェルが書物を持ってくるのを待っていたのだった。