これが、今の私なのだ。言葉を紡ぐことへの喜びも、物語を生み出すことへの衝動も、どこかに置き忘れてしまった。ただ、義務感と、恐怖心だけで、このデスクに向かっている。
窓の外は、深い闇に沈んでいる。遠くで、救急車のサイレンのような音が微かに聞こえた気がした。八王子の夜は、静かだ。けれど、私の部屋の中だけは、言葉にならない叫びと、焦燥感と、そしてどうしようもない孤独感で、息苦しいほどに満ちていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。壁の時計の針は、もうすぐ午前一時を指そうとしていた。結局、私は、取材用の当たり障りのないメモを数行タイプしただけで、それ以上、一文字も書き進めることができなかった。
疲労感と、それ以上に強い無力感に襲われ、私は、パソコンの電源を落とした。画面が暗転し、部屋は完全な静寂に包まれる。
もう、無理なのかもしれない――そういう、弱音が、今度ははっきりと声になりそうだった。書けない。期待に応えられない。私は、もう、作家ではいられないのかもしれない。
ベッドに潜り込み、目を閉じる。けれど、眠気は全く訪れなかった。思考だけが、空回りするようにぐるぐると回り続ける。
先輩は、今、何をしているだろう。
考えてはいけない、と思うのに、彼のことが再び頭をよぎる。彼は、私が送ったメッセージを読んだだろうか。もし読んだなら、どう思っただろうか。
あの時、図書館で感情をぶつけてしまったことへの後悔。そして、喫茶店で、彼の恋愛事情を探るような真似をしてしまったことへの自己嫌悪。私は、彼に甘えすぎていたのだ。彼なら、私の全てを受け止めてくれるはずだ、と。そんな身勝手な期待を押し付けていた。
私と先輩は、もう、違う場所にいるんだ。
彼は私を隣に居させてくれない。
その事実を、受け入れなければならない。彼に救いを求めるのは、もうやめよう。私は、私の力で、この苦しみを乗り越えなければ。
そう、決意したはずなのに。
心の奥底では、まだどこかで、彼を求めている自分がいる。あの頃のように、隣で笑い合い、言葉を交わし合えたなら。そうすれば、この息苦しい現実から、少しは解放されるのではないか、と。
なんと弱い、愚かな心だろうか。
私は、強く瞼を閉じた。明日もまた、同じ苦しみが待っている。それでも、朝は来るのだ。逃げることは、許されない。
冬の夜は、どこまでも深く、そして静かだった。
窓の外は、深い闇に沈んでいる。遠くで、救急車のサイレンのような音が微かに聞こえた気がした。八王子の夜は、静かだ。けれど、私の部屋の中だけは、言葉にならない叫びと、焦燥感と、そしてどうしようもない孤独感で、息苦しいほどに満ちていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。壁の時計の針は、もうすぐ午前一時を指そうとしていた。結局、私は、取材用の当たり障りのないメモを数行タイプしただけで、それ以上、一文字も書き進めることができなかった。
疲労感と、それ以上に強い無力感に襲われ、私は、パソコンの電源を落とした。画面が暗転し、部屋は完全な静寂に包まれる。
もう、無理なのかもしれない――そういう、弱音が、今度ははっきりと声になりそうだった。書けない。期待に応えられない。私は、もう、作家ではいられないのかもしれない。
ベッドに潜り込み、目を閉じる。けれど、眠気は全く訪れなかった。思考だけが、空回りするようにぐるぐると回り続ける。
先輩は、今、何をしているだろう。
考えてはいけない、と思うのに、彼のことが再び頭をよぎる。彼は、私が送ったメッセージを読んだだろうか。もし読んだなら、どう思っただろうか。
あの時、図書館で感情をぶつけてしまったことへの後悔。そして、喫茶店で、彼の恋愛事情を探るような真似をしてしまったことへの自己嫌悪。私は、彼に甘えすぎていたのだ。彼なら、私の全てを受け止めてくれるはずだ、と。そんな身勝手な期待を押し付けていた。
私と先輩は、もう、違う場所にいるんだ。
彼は私を隣に居させてくれない。
その事実を、受け入れなければならない。彼に救いを求めるのは、もうやめよう。私は、私の力で、この苦しみを乗り越えなければ。
そう、決意したはずなのに。
心の奥底では、まだどこかで、彼を求めている自分がいる。あの頃のように、隣で笑い合い、言葉を交わし合えたなら。そうすれば、この息苦しい現実から、少しは解放されるのではないか、と。
なんと弱い、愚かな心だろうか。
私は、強く瞼を閉じた。明日もまた、同じ苦しみが待っている。それでも、朝は来るのだ。逃げることは、許されない。
冬の夜は、どこまでも深く、そして静かだった。
