「でも……お母さんだって、私がデビューした時、あんなに喜んでくれたじゃない。なのに……どうして、今はそんなに心配ばかりするの? 私の書くものが……そんなに信じられない?」
問いかけは、悲痛な響きを帯びていたと思う。それは、母に対する問いかけであると同時に、私自身への問いかけでもあった。私は、自分の言葉を、自分の才能を、心の底から信じることができているのだろうか。
母は、俯いたまま、しばらく何も言わなかった。やがて、顔を上げると、その目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「信じてるわよ。雪乃の才能は、お母さんが一番信じてる。だからこそ、心配なのよ」
絞り出すような、震える声だった。
「あなたの書くものが素晴らしいからこそ、世間の期待も大きくなる。プレッシャーだって、相当なものでしょう? あなたが、それに押し潰されてしまわないか……いつか、書くことが辛くなって、全部投げ出したくなってしまわないか……お母さんは、それが怖いのよ」
母の言葉は、私の心の最も柔らかな部分を、正確に突いていた。そうだ、怖いのだ。私も、母と同じように。期待に応えられないこと、才能が枯渇すること、そして、書くことが苦しみだけになってしまうことが。
「大学へ行けば、少しは……その、書くことから距離を置いて、違う世界を見ることもできるでしょう? 普通の友達を作って、勉強したり、遊んだり……そういう時間が、もしかしたら、あなたの助けになるかもしれないって……お父さんも、そう言ってたわ」
それは、親としての、切実な願いなのだろう。娘に、安定した、幸せな人生を送ってほしいという。その気持ちは痛いほど分かる。けれど、今の私には、その願いすらも、重圧に感じられてしまうのだ。
問いかけは、悲痛な響きを帯びていたと思う。それは、母に対する問いかけであると同時に、私自身への問いかけでもあった。私は、自分の言葉を、自分の才能を、心の底から信じることができているのだろうか。
母は、俯いたまま、しばらく何も言わなかった。やがて、顔を上げると、その目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「信じてるわよ。雪乃の才能は、お母さんが一番信じてる。だからこそ、心配なのよ」
絞り出すような、震える声だった。
「あなたの書くものが素晴らしいからこそ、世間の期待も大きくなる。プレッシャーだって、相当なものでしょう? あなたが、それに押し潰されてしまわないか……いつか、書くことが辛くなって、全部投げ出したくなってしまわないか……お母さんは、それが怖いのよ」
母の言葉は、私の心の最も柔らかな部分を、正確に突いていた。そうだ、怖いのだ。私も、母と同じように。期待に応えられないこと、才能が枯渇すること、そして、書くことが苦しみだけになってしまうことが。
「大学へ行けば、少しは……その、書くことから距離を置いて、違う世界を見ることもできるでしょう? 普通の友達を作って、勉強したり、遊んだり……そういう時間が、もしかしたら、あなたの助けになるかもしれないって……お父さんも、そう言ってたわ」
それは、親としての、切実な願いなのだろう。娘に、安定した、幸せな人生を送ってほしいという。その気持ちは痛いほど分かる。けれど、今の私には、その願いすらも、重圧に感じられてしまうのだ。
