「最近、ちゃんと眠れてる? なんだか、顔色が良くないわよ。目の下に隈もできてるし……。受験勉強も大変なんでしょうけど、その……お仕事との両立、本当に大丈夫なの。受験はもうすぐよ」

 また、その話か、と内心でため息をつく。母の心配は理解できる。けれど、その心配が、今の私には重荷でしかなかった。まるで、私が選んだ道が間違っていると、遠回しに言われているような気がしてしまうのだ。

「……大丈夫だって言ってるでしょ。心配しすぎだよ」
「心配にもなるわよ。あなた、締め切り前になるといつも部屋に籠りっきりで、食事もろくに取らないじゃない。見ていて、こっちがはらはらするわ」

 母の声には、苛立ちと不安が滲んでいた。

「それに……この間、お父さんとも話したんだけどね」

 来た、と思った。父の名前が出るときは、大抵、私にとって耳の痛い話なのだ。

「やっぱり、大学には行った方がいいと思うのよ。ちゃんと、普通の学生としての時間を持つことも、あなたの人生にとっては、きっと大切な経験になるはずだから。作家一本でやっていくなんて……そんな不安定な生き方、お母さん、心配で……」

 その言葉を聞いた瞬間、私の心の中で何かがぷつりと切れた。

「不安定で、悪かったわね!」