恐怖も不安も、消えたわけではない。むしろ、送信した直後の今の方が、より強く感じているかもしれない。けれど、以前のような、息苦しいほどの絶望感はなかった。代わりに、胸の奥には、かすかな、しかし確かな「予感」のようなものが芽生え始めていた。
 この行動が、何に繋がるのかは分からない。今ある空白のエンドロールに、どんな文字が書き込まれるのかも。
 それでも、僕は、顔を上げなければならない。返事を待つ間も、そして、その返事が来た後も。自分の選択に、責任を持たなければならない。
 僕は、再び窓辺に立ち、夜景を見つめた。冷たいガラスに額を押し付ける。ひんやりとした感触が、火照った思考を少しだけ冷ましてくれるようだった。
 夜は、まだ長く、そして静かだ。僕の物語は、今、静かに、しかし確かに動き始めた。その先に待つものが、喜びか、悲しみか、それとも、そのどちらでもない何かは、まだ誰にも分からない。
 ただ、もう僕は、過去という名の暗闇の中で、立ち尽くしているだけの存在ではないのだ。