「……美咲先輩」
『ん?』
「ありがとうございます。……すごく、助かりました。……本当に」

 心の底からの感謝の言葉だった。
 具体的な解決策をもらったわけではない。けれど、僕がどうすべきか、その方向性を、彼女は示してくれた。そして何より、僕の混乱した気持ちに寄り添い、肯定してくれたことが、僕にとっては大きな救いだった。

『どういたしまして。……まあ、私にできることなんて、話聞くくらいだけどね』

 彼女は、照れたように笑う気配がした。

『……もし、また何かあったら、いつでも連絡してきなよ。今度は、もうちょっと早く返事するからさ!』
「はい……」
『じゃあ、そろそろ家着くから、切るね。……あんまり、一人で思い詰めんなよ! おやすみ』
「はい。おやすみなさい。……ありがとうございました」

 通話が切れる。プツリ、という音と共に、部屋には再び静寂が戻ってきた。けれど、先ほどまでの重苦しい静寂とは、明らかに質が違っていた。

 僕は、しばらくの間、スマートフォンの画面を見つめていた。美咲先輩の声の温かさが、まだ耳に残っている。彼女の言葉が、心の中で反芻される。