店を出る時、橘さんは「またいつでも来なさい」とだけ言って、静かに見送ってくれた。その背中に一礼し、僕は再び夜の街へと踏み出した。
冷たい夜気が心地よい。橘さんの言葉が、そして彼が淹れてくれたコーヒーの温かさが、まだ胸の中に残っている。
――書こうとしなければ、何も始まらない
アパートへの帰り道、僕は何度もその言葉を反芻していた。書くことへの恐怖は、まだ消えてはいない。けれど、それ以上に、「伝えたい」という気持ちが、そして「変わりたい」という願いが、僕の中で確かな形を持ち始めていた。
部屋に戻った僕は、コートも脱がずに、まっすぐパソコンデスクへと向かった。そして、スマートフォンのメッセージアプリを開き、ある名前を探し出す。
美咲先輩。
彼女の言葉が、橘さんの言葉と重なり合い、僕の中で一つの確信へと変わっていく。
そうだ、まずは話を聞いてもらおう。一人で抱え込まずに。そして、その先に、僕が進むべき道が、きっと見えてくるはずだ。
僕はメッセージを打ち始めた。僕の数少ない友人関係。相談できる人は、この人しかいなかった。
『美咲先輩、お疲れ様です。佐伯です。夜分にすみません。もし今、迷惑じゃなければ、また少し、相談に乗ってもらえませんか?』
送信ボタンを押す指は、まだ少しだけ震えていた。
冷たい夜気が心地よい。橘さんの言葉が、そして彼が淹れてくれたコーヒーの温かさが、まだ胸の中に残っている。
――書こうとしなければ、何も始まらない
アパートへの帰り道、僕は何度もその言葉を反芻していた。書くことへの恐怖は、まだ消えてはいない。けれど、それ以上に、「伝えたい」という気持ちが、そして「変わりたい」という願いが、僕の中で確かな形を持ち始めていた。
部屋に戻った僕は、コートも脱がずに、まっすぐパソコンデスクへと向かった。そして、スマートフォンのメッセージアプリを開き、ある名前を探し出す。
美咲先輩。
彼女の言葉が、橘さんの言葉と重なり合い、僕の中で一つの確信へと変わっていく。
そうだ、まずは話を聞いてもらおう。一人で抱え込まずに。そして、その先に、僕が進むべき道が、きっと見えてくるはずだ。
僕はメッセージを打ち始めた。僕の数少ない友人関係。相談できる人は、この人しかいなかった。
『美咲先輩、お疲れ様です。佐伯です。夜分にすみません。もし今、迷惑じゃなければ、また少し、相談に乗ってもらえませんか?』
送信ボタンを押す指は、まだ少しだけ震えていた。
