「……いえ」

 僕は、ようやく言葉を発することができた。

「ありがとうございます。すごく……参考になりました。少し、考えてみます」

 それは、紛れもない本心だった。

「そっか、よかった」

 美咲先輩は、ほっとしたように、いつもの明るい笑顔に戻った。

「うん。いつでも、また聞くからね。一人で抱え込まないこと!」

 彼女は、力づけるように、再び僕の肩を軽く叩いた。その温かさが、今は素直にありがたいと感じられた。
 その夜、バイトを終えて自室のアパートに戻っても、美咲先輩の言葉が頭の中で反響していた。
 「向き合うこと」「正直に伝えること」。そして、「後悔するくらいなら――」。

 言いようのない衝動に駆られ、僕はパソコンを立ち上げた。冷たい起動音の後、真っ白な検索窓が目の前に現れる。僕は、震える指で、数日前から何度も入力しては消去していた文字列を、今度こそ打ち込んだ。