中村と別れた後、僕はカフェテリアの窓から、満開の桜を眺めた。風に舞う花びらが、陽光を浴びてきらきらと輝いている。

 僕のエンドロールに、作家としての名前が刻まれることは、きっともうないだろう。 でも、それでいいのだ。 僕の隣には、素晴らしい物語を紡ぎ出す人がいる。 その物語を、誰よりも深く味わい、理解し、時にはその輝きを、こうして誰かにそっと手渡すことができる。 そんな役割も、悪くない。 悪くないどころか、最高の結末なのかもしれないな――。

 ポケットの中で、スマートフォンが震えた。画面を見ると、メッセージの通知。送り主は、もちろん――。 僕は、柔らかい笑みを浮かべながら、そのメッセージを開いた。

 僕たちのエンドロールは、空白なんかじゃない。 温かくて、優しくて、そして希望に満ちた光が、そこには確かに差し込んでいる。 僕たちの物語は、これからも続いていく。 この、桜舞う季節のように、輝かしい未来へと。

 空は、どこまでも高く、青く澄み渡っていた。

 ――完