「俺たちは、ただの先輩と後輩で、生意気で、でも、どこか対等なライバルで…そうだったはずだろ? 同じ場所を目指して、隣で、競い合って…。俺は、その関係が…お前が隣にいる、その時間が、たまらなく大事だったんだ。お前が隣にいてくれるだけで、俺は、俺でいられた気がした…!」
「先輩…」
彼女の声が、か細く震える。
「でも、『面白い』って、お前の才能を本気で認めてしまったら、それはもう終わりなんだ。俺は、お前を『天才』だと認めてしまう。そしたら、もう隣にはいられない。俺はただの凡人で、お前は手の届かない存在になる。俺は、ただ、遠くからお前を見上げるだけの、あるいは、ただの『傍観者』として、お前の物語の外側にいることしかできなくなる。それが…それが、何よりも怖かったんだ。お前を…柊雪乃を、失ってしまうことが。俺の知らない場所へ行ってしまうのが。俺を、置いていってしまうのが」
感情が昂り、言葉が途切れ途切れになる。涙で視界が歪み、彼女の輪郭すら、ぼやけて見える。
「だから…! だから、言えなかった…。ごめん…。本当に、ごめん…。弱くて、ずるくて…臆病で…ごめん…」
僕は、嗚咽を漏らしながら、ただ繰り返した。彼女の顔を見ることができない。今、どんな顔をしたらいいのか分からない。ただ、僕の心の中にある、醜く、そしてどうしようもない本音の全てを、彼女の前にさらけ出した。
風が、僕たちの間を吹き抜けていく。長い、長い沈黙。川の流れる音だけが、やけに大きく聞こえた。もう、彼女は何も言ってくれないかもしれない。軽蔑されたかもしれない。そう思うと、胸が張り裂けそうだった。
やがて、すすり泣くような声が聞こえた。恐る恐る顔を上げると、彼女が、肩を震わせながら、大粒の涙を流していた。けれど、その瞳は、ただ悲しんでいるだけではなかった。怒りか、安堵か、それとも別の何かか、複雑な光が宿って、僕を捉えていた。
「ばか」
「先輩…」
彼女の声が、か細く震える。
「でも、『面白い』って、お前の才能を本気で認めてしまったら、それはもう終わりなんだ。俺は、お前を『天才』だと認めてしまう。そしたら、もう隣にはいられない。俺はただの凡人で、お前は手の届かない存在になる。俺は、ただ、遠くからお前を見上げるだけの、あるいは、ただの『傍観者』として、お前の物語の外側にいることしかできなくなる。それが…それが、何よりも怖かったんだ。お前を…柊雪乃を、失ってしまうことが。俺の知らない場所へ行ってしまうのが。俺を、置いていってしまうのが」
感情が昂り、言葉が途切れ途切れになる。涙で視界が歪み、彼女の輪郭すら、ぼやけて見える。
「だから…! だから、言えなかった…。ごめん…。本当に、ごめん…。弱くて、ずるくて…臆病で…ごめん…」
僕は、嗚咽を漏らしながら、ただ繰り返した。彼女の顔を見ることができない。今、どんな顔をしたらいいのか分からない。ただ、僕の心の中にある、醜く、そしてどうしようもない本音の全てを、彼女の前にさらけ出した。
風が、僕たちの間を吹き抜けていく。長い、長い沈黙。川の流れる音だけが、やけに大きく聞こえた。もう、彼女は何も言ってくれないかもしれない。軽蔑されたかもしれない。そう思うと、胸が張り裂けそうだった。
やがて、すすり泣くような声が聞こえた。恐る恐る顔を上げると、彼女が、肩を震わせながら、大粒の涙を流していた。けれど、その瞳は、ただ悲しんでいるだけではなかった。怒りか、安堵か、それとも別の何かか、複雑な光が宿って、僕を捉えていた。
「ばか」
