祐一が私のことを忘れたあの日から随分と時間が経った、8月のある日。私はいつもの草原で歌を歌っていた。
私はあの日、決心をした。半年経っても祐一が私のことを思い出さなかったら、もう祐一のことを過去にして、未来に進むことを。
悲しくないと言ったら嘘になるし、もうしばらく恋人なんて作らないだろうけど、私の心は曇っていなかった。短い間だけど祐一と一緒に過ごした思い出はずっと心の中にある。時に辛くなったらこの思い出に浸って、また歩き出す。この先の長い人生、私はそのようにして生き抜けるような気がした。
ガサッ。
突如、後ろの茂みが揺れ動く。誰か来た?正体を確かめようと茂みの方に近づくと目の前に黒い影が飛び出してきた。
「うわっ」
思わず尻餅をつく。すぐさま黒い影の正体を目で追う。ただのカラスだった。
一瞬、祐一が戻ってきてくれたのかと思ってしまったが、それはあまり現実的ではないと自分に言い聞かせる。ここで一瞬期待してしまうあたり、私はまだ彼のことを過去にしきれていないんだろう。
再び歩き出そうと立ち上がる。草原の真ん中あたりに戻ろうと足を踏み出した時。
「あの…」
背後から、声が聞こえた。
「友穂…!」
最後にこの声を聞いたのは2ヶ月ほど前の筈なのに…。
「…えっと、久しぶり」
その声は私の中に温かく響く。
「ここに戻ってきて…良かった?」
涙をなんとか抑えながら、私は深く頷く。
「それと…今の僕には伝えた記憶が無いから、何度だって言わせてほしい」
その時、幸せを運ぶ夏色の風が、彼の声を後押しした。
「あなたのことが、好きなんです」
私がずっと大好きな、彼の声だった。
私はあの日、決心をした。半年経っても祐一が私のことを思い出さなかったら、もう祐一のことを過去にして、未来に進むことを。
悲しくないと言ったら嘘になるし、もうしばらく恋人なんて作らないだろうけど、私の心は曇っていなかった。短い間だけど祐一と一緒に過ごした思い出はずっと心の中にある。時に辛くなったらこの思い出に浸って、また歩き出す。この先の長い人生、私はそのようにして生き抜けるような気がした。
ガサッ。
突如、後ろの茂みが揺れ動く。誰か来た?正体を確かめようと茂みの方に近づくと目の前に黒い影が飛び出してきた。
「うわっ」
思わず尻餅をつく。すぐさま黒い影の正体を目で追う。ただのカラスだった。
一瞬、祐一が戻ってきてくれたのかと思ってしまったが、それはあまり現実的ではないと自分に言い聞かせる。ここで一瞬期待してしまうあたり、私はまだ彼のことを過去にしきれていないんだろう。
再び歩き出そうと立ち上がる。草原の真ん中あたりに戻ろうと足を踏み出した時。
「あの…」
背後から、声が聞こえた。
「友穂…!」
最後にこの声を聞いたのは2ヶ月ほど前の筈なのに…。
「…えっと、久しぶり」
その声は私の中に温かく響く。
「ここに戻ってきて…良かった?」
涙をなんとか抑えながら、私は深く頷く。
「それと…今の僕には伝えた記憶が無いから、何度だって言わせてほしい」
その時、幸せを運ぶ夏色の風が、彼の声を後押しした。
「あなたのことが、好きなんです」
私がずっと大好きな、彼の声だった。


