* * *
それから、一年が経った。
最初は、ただのレイお兄ちゃんの代わりとして、打算で近付いただけだったのに、いつの間にかレイが大切な友達のようになっていた。
嘘を吐いて、代用として近付いたのに、レイとの日々は楽しくて、レイお兄ちゃんを亡くした痛みも薄れるくらい、幸せで。
だから、言い出せなかった。今更、幽霊が見えるなんて嘘だ、なんて。私は、霊の見える従兄弟の代わりに、レイに近付いただけだなんて。絶対に、言えなかった。
言ったらきっと、この関係は終わってしまう。レイに幻滅されて、嫌われて、友達ではいられなくなってしまう。それが怖くて、謝らなければいけないと思うのに、いつまでもズルズルと引き延ばしてしまっていた。
今日もまた、言えなかった。仕方ない、明日こそ言おう。また言えなかった。じゃあ、明後日は言おう──。
そんな風にどんどん先延ばしにして。自分の罪を見ないふりをして、何食わぬ顔で騙し続けているレイに笑顔を向けて。
逃げて、逃げて、逃げて。
──そして、あの雨の降る放課後。
レイと別れた帰り道で、私は車に轢かれて死んだのだ。
薄れていく意識の中で、ああ、これは罰なのかな、と思った。
レイに嘘を吐いた、私への罰。
──ごめん。ごめんね。
降りしきる雨音の中で、私は声にならない懺悔を繰り返していた。
