夏の夢の終わりが近づいてきた。
会場では現役歌手の特別デモンストレーションが行われている。プロが舞台に立った途端、会場を包む雰囲気が変わった。立ち姿ひとつで会場を自分の色に染めてしまえる。
いつかは自分もあんなふうになりたい。私はその姿を、羨ましさを込めて見つめた。
そして再び、舞台に立つ。どの出場者も緊張した面持ちで司会の言葉を聞いている。
「勝利を掴むのはどのチームか。優勝したのは」
お決まりの音楽が流れて、暗くなった舞台に黄色い光が走る。大丈夫などと涼しい顔で言っていたルナも、硬い表情をしていた。
明るいスポットライトは自分たちの頭上に輝くだろうか。待ち遠しいような怖いようなその一瞬を、私はルナのほっそりとした手を握って、じっと待った。
遠い昔、こんな光景を見たような、懐かしい気持ちが胸の底に沸いてくる。
約束の時がやってきたのだ。
まばゆい光に全身が包まれた。客席で奏夜が立ち上がる。
だしぬけに、あるフレーズが頭の中に浮かんだ。奏夜にこのフレーズを伝えて新しい曲を作ってもらおう。私はその思いつきに満足して、小さく微笑んだ。



