結果発表の時間がやってきた。自信なんてまるでなかったのにいざ発表となると、もしかしたらと期待に胸が高鳴った。
「お待たせしました。結果を発表します」
派手な蝶ネクタイをした司会者。彼の一言で人生が変わる。
死刑宣告でも待っているような気分だ。もったいぶった顔で会場に視線を走らせる司会者を、私はじっと睨んだ。
「優勝は、ルナ&広子ペア」
「きゃあ」
ルナが隣で甲高い声で叫び、飛びついてくる。髪をくしゃくしゃにされながら、私は司会者の声を何度も頭の中で繰り返した。
「え、優勝。ほんとうに? 私たちが?」
まだ信じられずルナに尋ねる。
「そうだってば。もう! 反応鈍いよ、ヒロ」
「どうしよ。嘘みたいっ」
涙腺がじんと熱くなった。私は呆れるルナを夢中で抱き締め返した。柔らかい感触、甘い香りに眩暈がする。今にも目覚ましが鳴って、ベッドで目を覚ますんじゃないだろうか。
でも抱き締めたルナの柔らかさも温もりも、背中に飛びついてきた茉理の重さも、肩を叩く奏夜の手の固さも、たしかに現実的な質感をもっている。
「では優勝したお二人はステージへ」
「いこう、ヒロ」
ルナが大理石のように滑らかな手を伸ばす。私は無言でその手を握り、ステージに導かれた。
人波が分かれて道ができる。モーセの十戒みたいだ。雨のような拍手に包まれて、眩しく輝くスポットライトが当たる。羨望と憧憬の交じり合った、たくさんの眼差し。鳴りやまない拍手の雨。
感慨が少しずつ沸いてきた。真面目しか取り柄が無いと思っていた自分に、こんな特別なことが起こるなんて。
興奮に全身が熱くなる。ケガをしないよう無難に生きてきたつまらない日々とも、これでお別れだ。必至で足掻いてきた三週間が報われた喜びに、涙が溢れる。
「私、嬉し泣きなんて人生で初めてだよ」
「じゃあこれから一杯、嬉し泣きしようね」
泉のような瞳を潤ましてルナが言う。この先の人生を歩むまでは当分死ねない。私は心の底からそんな風に思った。
「お待たせしました。結果を発表します」
派手な蝶ネクタイをした司会者。彼の一言で人生が変わる。
死刑宣告でも待っているような気分だ。もったいぶった顔で会場に視線を走らせる司会者を、私はじっと睨んだ。
「優勝は、ルナ&広子ペア」
「きゃあ」
ルナが隣で甲高い声で叫び、飛びついてくる。髪をくしゃくしゃにされながら、私は司会者の声を何度も頭の中で繰り返した。
「え、優勝。ほんとうに? 私たちが?」
まだ信じられずルナに尋ねる。
「そうだってば。もう! 反応鈍いよ、ヒロ」
「どうしよ。嘘みたいっ」
涙腺がじんと熱くなった。私は呆れるルナを夢中で抱き締め返した。柔らかい感触、甘い香りに眩暈がする。今にも目覚ましが鳴って、ベッドで目を覚ますんじゃないだろうか。
でも抱き締めたルナの柔らかさも温もりも、背中に飛びついてきた茉理の重さも、肩を叩く奏夜の手の固さも、たしかに現実的な質感をもっている。
「では優勝したお二人はステージへ」
「いこう、ヒロ」
ルナが大理石のように滑らかな手を伸ばす。私は無言でその手を握り、ステージに導かれた。
人波が分かれて道ができる。モーセの十戒みたいだ。雨のような拍手に包まれて、眩しく輝くスポットライトが当たる。羨望と憧憬の交じり合った、たくさんの眼差し。鳴りやまない拍手の雨。
感慨が少しずつ沸いてきた。真面目しか取り柄が無いと思っていた自分に、こんな特別なことが起こるなんて。
興奮に全身が熱くなる。ケガをしないよう無難に生きてきたつまらない日々とも、これでお別れだ。必至で足掻いてきた三週間が報われた喜びに、涙が溢れる。
「私、嬉し泣きなんて人生で初めてだよ」
「じゃあこれから一杯、嬉し泣きしようね」
泉のような瞳を潤ましてルナが言う。この先の人生を歩むまでは当分死ねない。私は心の底からそんな風に思った。



