なのに夕方、ラインで一方的に練習中止を告げられた。「何かあったの?」と送ったが、返事はいつまで待ってもこなかった。
その日は長めに残業して帰った。家に帰る頃には十一時前になっていて、母はもう眠っていた。暗いリビングで一人、コンビニの弁当をつつきながら、結局のところ自分は一人ぼっちなのかもしれないと思う。
急に茉理の顔が見たくなった。遠く離れた埼玉で今ごろ何をしているのだろう。まだ仕事だろうか。それとも気の合う仲間と居酒屋にでも繰り出しているのだろうか。唯一、親友と呼べる相手。その茉理とすら忙しさを理由にずっと連絡をとっていない。
『元気? 最近どう?』
寂しさに耐えかねてメッセージを送ったが、いくら待っても既読にならなかった。
いつの間にか雨が降り出していて、窓の向こうは星一つ見えない。
「暗いなぁ」
呟きながら、課題曲のデモテープを再生する。
淡々とした歌声が仄暗い旋律を紡いでいく。
眩しい過去に囚われて一歩も踏み出せない――。この歌の女は私だ。苦しみもがいて不毛な状況から抜け出そうとするのか、心地良い自己憐憫と底部安定に沈んでいくのか。その先は示されていない。きっと歌っているうちに答えが見つかるだろう。
返信の無いラインも職場での出来事もどうでもよくなっていく。
黙々とボイストレーニングと歌の練習を繰り返すうちに午前二時を回っていた。電池が切れたみたいにベッドに倒れこむと、すぐに眠りがやってきた。ひたひたと充足感が心身を満たしていく。こんなに気持ちよく眠りに落ちるのはいつぶりだろう。このところ明日が来るのが少し楽しみだ。
その日は長めに残業して帰った。家に帰る頃には十一時前になっていて、母はもう眠っていた。暗いリビングで一人、コンビニの弁当をつつきながら、結局のところ自分は一人ぼっちなのかもしれないと思う。
急に茉理の顔が見たくなった。遠く離れた埼玉で今ごろ何をしているのだろう。まだ仕事だろうか。それとも気の合う仲間と居酒屋にでも繰り出しているのだろうか。唯一、親友と呼べる相手。その茉理とすら忙しさを理由にずっと連絡をとっていない。
『元気? 最近どう?』
寂しさに耐えかねてメッセージを送ったが、いくら待っても既読にならなかった。
いつの間にか雨が降り出していて、窓の向こうは星一つ見えない。
「暗いなぁ」
呟きながら、課題曲のデモテープを再生する。
淡々とした歌声が仄暗い旋律を紡いでいく。
眩しい過去に囚われて一歩も踏み出せない――。この歌の女は私だ。苦しみもがいて不毛な状況から抜け出そうとするのか、心地良い自己憐憫と底部安定に沈んでいくのか。その先は示されていない。きっと歌っているうちに答えが見つかるだろう。
返信の無いラインも職場での出来事もどうでもよくなっていく。
黙々とボイストレーニングと歌の練習を繰り返すうちに午前二時を回っていた。電池が切れたみたいにベッドに倒れこむと、すぐに眠りがやってきた。ひたひたと充足感が心身を満たしていく。こんなに気持ちよく眠りに落ちるのはいつぶりだろう。このところ明日が来るのが少し楽しみだ。



