本節では、前述のアンケートの結果を簡潔に示す。
 
 
 【質問(1)】
 南小学校を舞台とした「学校の怪談」を聞いたことがあるかについてである。



「はい」が全員(60名)、「いいえ」が0名だった。これは前回調査と同様の結果である。

 
 【質問(2)】
「はい」と答えた児童が対象である。全体として、広く伝わっている「学校の怪談」が、南小学校においても伝承され続けていることがわかる。「ハギツグくん」については、今回の調査でも全員から回答を得られた。以下に主要な回答例を示す。

 ・トイレの怪談・・・「女子トイレの奥から三番目を三回ノックすると、花子さんが答える」など(60名)
 ・「ハギツグくん」(60名)
 ・教室での怪談・・・「四時四十四分に、四人で教室の四隅の壁に手をつくと、異次元に連れていかれる」、「テスト中、昔死んだ先生が見回っている」など(34名)
 ・廊下での怪談・・・「廊下を上半身だけの女の人が、腕で走って、下半身を探している」、「廊下がループしている」など(19名)
 ・音楽室の怪談・・・「音楽室で、夜になると幽霊が演奏会をする」、「ひとりでにピアノの音が鳴る」など(18名)
 ・電子機器の怪談・・・「授業中、タブレットでこっそり遊んでいると、呪いのメッセージが届く」、「消しても出てくる壁の染みがバーコード(著者注:二次元コード)になっていて、スマホで読み取ると変な写真がダウンロードされる」(7名)

 以上が主な回答である。「トイレの花子さん」と「ハギツグくん」の回答は、全員から得られた。また前回調査では確認できなかった、電子機器を用いた怪談が、数は少ないものの流布していることも見受けられる。

 
 【質問(3)】
 今回新しく設置した質問である。怪談を聞く際、対面かオンラインかについて答えてもらった。
 
 

 怪談を聞いたのが「対面」と答えた児童は49件(81.7%)、「オンライン」は7件(11.7%)、「どちらも同じくらい」が3件(5.0%)、「覚えていない」が1件(1.7%)だった。


 
 【質問(4)】
 怪談を誰から聞いたか答えてもらった。複数回答のため、回答の合計は60を超える。



「南小学校の同級生の友達」が60件(100%)、「先生」が60件(100%)、「南小学校の上級生・下級生」が28件(46.7%)、「ほかの学校の友達」が3件(5.0%)、「兄弟・姉妹」が21件(35.0%)、「親」が60件(100%)、「その他(塾の先生など)」が2件(3.3%)という結果だった。


 
 【質問(5)】
 各学年で聞いた怪談を答えたもらった。



 一年生では10名(16.7%)が主にトイレの怪談を聞いたと答え、二年生では14名(23.3%)がそれに加え廊下の怪談など、三年生では19名(31.7%)が教室での怪談など、四年生では17名(28.3%)が音楽室や電子機器の怪談など、五年生では47名(78.3%)が電子機器と「ハギツグくん」の怪談など、六年生では60名(100%)が「ハギツグくん」の怪談を聞いていることを確認した。


 
 【質問(6)】
 自身が誰かに怪談を話した経験があるかを聞いた。



「はい」が42名(70.0%)、「いいえ」が18名(30.0%)であった。


 
 【質問(7)】
 新しい質問である。怪談をオンライン環境で共有する場合と、対面での共有の印象について、記述式で答えたもらった。以下に回答を抜粋する。

 ・「リアルのほうが怖い気がする」
 ・「アプリで話をすることもあるけど、直接話したほうが盛り上がると思う」
 ・「直接聞いた話だと、人によって話すことが変わる。文字で書いてあると、同じ話をみんなで共有しやすい」
 ・「怪談を信じていないから、よくわからない。でもハギツグくんは、対面でもオンラインでも嫌な気分になる」

 以上が主な回答である。怖さや盛り上がりを重視する児童は、対面での共有に好意的であり、傾向としては多数派のようだった。一方で、「ハギツグくん」は例外としつつ、怪談に対しあまり興味がない、信じていない児童は、オンラインと対面との違いをあまり感じていないことが浮かび上がった。

 
 【質問(8)】
 実際に怪談を見聞きした経験の有無を聞いた。



「はい」が全員(60名)、「いいえ」が0名であった。


 
 【質問(9)】
 (8)で「はい」と答えた者が対象となる。
 回答は「ハギツグくん」のみであった。以下に回答の一部を紹介する。

 ・「六年生になってわかりました。ハギツグくんはいます。でも顔とかはわからないです」
 ・「ハギツグくんはだれも知らないけど、みんな知ってます」
 ・「6月と秋ごろ、ハギツグくんの注意を見た」
 ・「ハギツグくんが来る注意を見たけど、来なかったです」
 ・「6月と9月と11月くらいにハギツグくんが来るってみんなで話しました」


 
 【質問(10)】
 体験した怪談に抱く印象を聞いた。(9)の回答が全て「ハギツグくん」であったため、ここでは「ハギツグくん」に対しての印象となる。また、複数回答のため、回答の合計は60を超える。



「こわい」が41名(68.3%)、「おもしろい」が17名(28.3%)、「わからない」が60名(100%)、「何とも思わない」が0名(0%)、「もっと知りたい」が53名(88.3%)、「その他(不安になる、落ち着かない気持ち、など)」が8名(13.3%)だった。




 次節では、2023年度のアンケート結果、及び補強的聞き取り調査に、2012年度から2017年度のアンケートと補助的聞き取り調査を交え、電子機器利用の影響や伝承の変容の考察を行う。