本調査は、2023年度2月に対面形式で実施された。これは、新型コロナウイルスの影響により、児童を巡るインターネット環境に大きな変化が見られたことから、「学校の怪談」にもその影響が及んでいるのではないかとの仮説に基づくものである。
 
 2012年度における、スマートフォン・フィーチャーフォンの小学生の普及率は、24%(n=671)であり、利用目的は主にメールなどのメッセージのやりとりと、検索だった。2017年度になると普及率は30%(n=1022)に上昇し、利用目的は動画やゲームと変わっていく。さらにタブレット端末やインターネット接続が可能なゲーム機もあり、子どもたちの環境は大きく変容している。

 2023年度には普及率が44%(n=980)となり、利用目的は動画、検索、ゲームとなっている。この数値はスマートフォンに限った普及率であり、タブレットやゲーム端末、ノート・デスクトップパソコンなどの機器を加えた、インターネット利用者は約95%を超える。2012年度の小学生のインターネット利用率は、41%(n=191)だった。2023年度とサンプル数に違いがあるため参考値として捉えるが、この十一年間でインターネット環境がほとんどの児童に普及したことは明らかである。(※1)

 これらインターネット利用状況やオンライン伝達の影響を踏まえ、新たなアンケートには、2012年度から2017年度の内容を一部変更し、インターネットにかかる質問を追加した。また、前回の結果を考慮し、「ハギツグくん」を想定した質問を設置した。対象は南小学校六学年からランダムに抽出された2クラス(計60名)とし、すべて匿名で実施した。調査は南小学校体育館において実施し、児童からアンケートに関する質問(書きかたがわからない等)に答えられるよう、スタッフが定期的に見回った。
 

 1)あなたは南小学校を舞台とした「学校の怪談」を、聞いたことがありますか?
   はい
   いいえ
 
 2)「はい」と答えた場合、その怪談について教えてください。(いくつでも)
   (例 三階の女子トイレに花子さんがいる/おどり場の鏡には未来の自分が映る など)

 3)あなたが「学校の怪談」を聞いたのは、対面ですか? それともオンライン(SNS・メッセージアプリなど)ですか?
   対面
   オンライン
   どちらも同じくらい
   覚えていない
 
 4)あなたはそれらの怪談を、だれから聞きましたか?(いくつでも)
   南小学校の同級生の友達
   先生
   南小学校の上級生・下級生
   ほかの学校の友達
   兄弟・姉妹
   親
   その他(具体的に)

 5)あなたが各学年で聞いたことのある、「南小学校の怪談」を教えてください。(いくつでも)
   (例 二年生のとき、トイレの花子さん/四年生のとき、音楽室の怪談 など)
 
 6)あなた自身は、だれかに怪談を話しましたか?
   はい
   いいえ
 
 7)オンライン環境(SNS・メッセージアプリなど)で怪談を共有する場合、対面で共有する場合と比べて、どのような印象の違いがあると感じますか?
  (例 対面のほうが、リアルに感じる/画面越しのほうが、一度に大勢と共有できて楽しい など)
 
 8)あなた自身が実際に見た、または聞いたことがある怪談はありますか?
   はい
   いいえ

 9)「はい」と答えた場合、どのような怪談か教えてください。(いくつでも)
   (例 五年生のとき一人で廊下を歩いていたら、だれもいないのに足音が聞こえた)
 
 10)あなたは体験した怪談を、どう思いますか?(いくつでも)
    こわい
    おもしろい
    わからない
    何とも思わない
    もっと知りたい
    その他(具体的に)

 
 前回同様、アンケート実施前に対象となる怪談について、通学する南小学校の怪談に限ること、学校にかかわりがあると感じる怪談であれば、自由に書いてもらう旨を周知した。アンケート終了後や休み時間に教室に訪問し、児童・教職員からの補強的聞き取り調査を行った。さらに今回は学校の連絡アプリを通じ、保護者への聞き取り調査も合わせて実施した。(※2)



※1 令和5年度「未成年者のインターネット利用実態調査」による。
※2 保護者はアンケート実施対象となった児童60名の保護者である。有効回答は53名だった。