本節では、前述のアンケートの結果を簡潔に示す。 


 【質問(1)】
 南小学校を舞台とした「学校の怪談」聞いたことがあるか、という問いに対して、「はい」が100%、「いいえ」が0%という結果となった。



 【質問(2)】
 (1)で「はい」と答えた児童が対象であるが、回答者360名全員が該当者となった。全体の回答としては、全国的に伝えられている「学校の七不思議」に近しい印象を受けたが、一部南小学校特有のものと思われる怪談が語られていることが確認された。以下は回答の抜粋例である。
 
 ・トイレの怪談・・・「一階の男子トイレに、太郎君が出る」、「女子トイレの奥から三番目をノックすると花子さんがいる」など(360名)
 ・「ハギツグくん」(360名)
 ・教室での怪談・・・「教室で机を四角く並べると、真ん中が異次元に通じるようになる」、「教室の黒板の日直欄に、クラスにいない人の名前を書くと、次の日一人増える」など(209名)
 ・音楽室の怪談・・・「音楽室のベートーヴェン肖像画が睨む」、「誰もひいていないピアノから音がする」など(171名)
 ・プールにまつわる怪談・・・「プールの左端のレーンで足が引っ張られる」、「真夜中にプールで泳いでいる子供がいる」など(158名)
 ・廊下での怪談・・・「三階の廊下がループしている」、「廊下を上半身だけの女の人が腕で走っている」など(119名)
 ・校庭での怪談・・・「運動会のとき、徒競走で転ぶと呪われる」、「校庭の桜の下に死体がある」など(82名)
 ・図書館の怪談・・・「図書館に読むと死ぬ本がある」、「本を返すのを忘れると呪われる」など(64名)
 ・体育館での怪談・・・「誰もいない体育館からボールの音がする」、「体育館には隠し地下がある」など(44名)

 これらが主な回答である。回答者全員が南小学校の怪談を聞いたことがある、と答えたこともあり、一人当たり記述された怪談の数は、平均して2.5件であった。「トイレの花子さん」と、南小学校独自の怪談「ハギツグくん」にかんしては、全員が知っている怪談だと考えられる。


 【質問(3)】
 回答者が怪談を誰から聞いたか答えてもらった。複数選択のため、回答の合計は360を超える。



 回答者全員が、「南小学校の同級生の友達」および「先生」から怪談を聞いたと回答した。一方、「南小学校の上級生・下級生」が202名(56.1%)、他の学校の友達が24名(6.7%)、兄弟・姉妹が127名(35.3%)、親が48名(13.3%)、その他(地域の人など)が12名(3.3%)と回答された。



 【質問(4)】
 各学年で聞いた怪談を答えたもらった。



 一年生では58名(16.1%)の児童が、主にトイレの怪談や体育館の怪談を聞いている。二年生では72名(20.0%)が、主に校庭とプールの怪談を聞き、三年生では104名(28.9%)が主に教室と音楽室の怪談、四年生では98名(27.2%)が主に図書館と廊下の怪談、五年生では219名(60.8%)が主に「ハギツグくん」の怪談、六年生では全員(360名)が「ハギツグくん」の怪談を聞いたと答えている。



 【質問(5)】
 自身が怪談を誰かに話したことがあるかを聞いた。



「はい」が244名(62.2%)、「いいえ」が116名(32.2%)であった。



 【質問(6)】
 怪談を話したことがある児童244名を対象にした、話すときの感情を探る設問である。



「相手に面白いと思ってほしい」が132件(58.9%)、「相手をこわがらせたい」が101件(45.1%)、「相手に知ってほしい」が154件(68.8%)、「相手にじまんしたい」が40件(17.9%)、「相手と気持ちを共有したい」が89件(39.7%)、その他(自分が楽しいからなど)は18件(8.0%)だった。



 【質問(7)】
 怪談を話したことがない児童116名を対象とした、聞いているときの感情を探る質問である。



「こわい」が79件(68.1%)、「おもしろい」が67件(57.8%)、「信じる」が51件(44.0%)、「疑う」が14件(12.1%)、「何とも思わない」が22件(19.0%)、「もっと聞きたい」が27件(23.3%)であった。

 ただし注意すべき点として、この質問は複数選択式であったが、回答用紙に116名全員が、「その他」においてコメントを残していた。「ハギツグくん」という怪談に限っては、全員が「信じる」と書き記している。



 【質問(8)】
 自身が怪談を実際に見た、聞いたかについて選択してもらった。



「はい」が360名(100%)となり、「いいえ」の回答者はいなかった。


 【質問(9)】
 (8)で「はい」と答えた児童が対象であるが、360名全員が該当者となった。
 また、回答はすべて、「ハギツグくん」の怪談のみであった。


 【質問(10)】
 知っている怪談の中で一番人に話したい・怖いと感じる怪談を、理由も合わせて書いてもらった。自由記述式であるが、回答には偏りが見られた。



 「ハギツグくん」・・・360件
 理由・・・「見たことがあるから」、「本当のことだから」、「実際に体験したし、他の学校の子に話すと驚いてもらえるから」など。


 次節では、本節で示した結果を踏まえ、各項目について詳細に検討していく。