副会長の青春は、恋と少し(?)のポンコツで出来ている。

 
◇◇

「ったく……」

 非常階段の上。俺の肩にもたれ掛かって眠りこける東山の頭の位置を直してやりながらひとりぼやく。
「泣き疲れて寝るとか……ほんとに高校生かお前」
 なるだけ肩は動かさないように顔を覗き込めば、滲む涙の向こうにうっすら隈が刻まれてるのが分かる。選挙活動が始まってからろくに寝れてないんだろう。
「ん……安西会長……」
「安西安西ってお前さぁ……」
 俺の肩にすり寄りながら、今さっき泣かされた男の名前を寝言で呼ぶもんだから片手で頭を抱える。最近の東山は栄養失調か睡眠不足でいつぶっ倒れてもおかしくない状態で、昼飯も惜しんで選挙活動にかまけてたことについては祖父江が動いたみたいだから──あとの睡眠は“大好きな安西会長”がちょっと促せば喜んで布団に飛び込むもんだと思ったのに。
「で?お前はなんで付いて来たんだよ」
 階段が繋がってる校舎の影に声をかけると、いつも通り余裕ぶった態度の安西が出てくる。 
「風紀委員チームの安西選手、優真くんなら今俺の隣で寝てますよ」
「……彼はこの学校の生徒と交際中だと聞く。誤解を招くような言い方をするな」
 ──お前のことだろ、それ。
 ──遠回しにしか牽制出来ない臆病者。
 (無意識にだろうが)安西と恋人になれたと話した後、華奢な身体を震わせて泣く東山のことを思い出す。
「なんでコイツを突き放した?接触禁止の中むりやり会いに来たからって、こんなに泣かせる意味はなかったろ」
「東山は俺たちがこれまで作り上げてきた生徒会を守るために、甘利に勝つことを決めてくれた。だから俺もその覚悟に答えようとしたまでだ。……お前は先ほど“敵”と言ったが、俺はあくまで──」
「敵だよお前は」
 さっき“敵情視察”と呼んだことを根に持ってるのか、言い訳がましく続ける安西に速攻で被せる。
「少なくとも、俺にとってはな」
「……風紀委員がこの辺りで臨時の見回りを行っている。抜け道を教えるから付いてこい」
 俺が何を言いたいか分かってるはずなのに──いやだからこそ、それ以上は言わせるかとばかりにさっさと歩き出す安西。
「返事する前に行きやがって……。今のうちに二人で逃げるか、東山」
「……はい……」
 なんとなく東山の耳元に口を寄せてそう囁くと、俺の肩に乗せたままの頭がこくん、と小さく揺れる。
「会長とならどこまでもお供します……」
「……ばーか」
 寝言だから仕方ないにしてもあまりにもズレた返事に思わず呟きながら、この可愛いポンコツをどうやって運ぼうか考えることにした。