副会長の青春は、恋と少し(?)のポンコツで出来ている。


◇◇

「さすがにもう着替えたか」

 文化祭最終日の一般公開が終わりそろそろ後夜祭が始まるという頃、風紀委員が拠点としている校舎三階の生徒指導室の窓からは日が落ちるのとほぼ同時にライトアップされた校庭の木々と、ぞろぞろとやってくる生徒たちがよく見える。その中に担当の仕事を終えたらしい東山くんを見つけた私はひとり呟いた。
 ──やはり、彼は飾らない方が愛らしい。
 締め切った窓に寄りかかり横目で眺めていると、当たり前のように彼の隣に滑り込んでくる安西が見えて自身の眉間に深い皺が刻まれていくのが分かる。
 ──どことなく同じ系統のブレスレットを身につけていたのは装飾品の解禁のPRとはまた違った意味があったか。
「所詮彼も仲良しごっこの生徒会、か」
 耳元で何かを言っている安西に対し見たことのないような気の抜けた笑みで口を開く東山くんに、存外低い声が口を突いて出る。
 ──思えば安西は悉く私の欲しいものを奪っていった。
 ──学年首席の座に生徒会長の椅子──……少々不器用だが聡明で勇敢な副会長の彼。
甘利(あまり)、調子はどうだ?」
「はい!!おかげさまで絶好調です!!!」
 窓の外を見たまま後ろに控えるとある後輩に声をかければ元気な返事が返ってくる。部屋全体を襲うその声量に他の委員たちが顔を顰めるのが窓に映って見えたが、これくらいの気概がなくてはこの先戦えないだろう。
「やはりお前の力が必要になった。来月の生徒会長選挙に向けて準備をしておいてくれ」
「承知致しました!生徒会長選挙参加の推薦を北川辺委員長からいただけるとは光栄です!!」
「油断はするな、今の生徒会二年生は東山くん以外にも良い人材が揃っている。……ある程度は“調整”しておくが最後はお前次第だ」
「はい!!──ところで委員長、ジブンが生徒会長になった際には東山くんを風紀委員長に据えるということでしょうか?」
「いや、どの道彼の心は風紀委員(こちら)にはない。……とはいえ生徒会に残留となっても厄介だ、どうにか消えてもらうことにするよ」
 窓から視線を外し後輩たちの方を見れば、多数の羨望の眼差しが私を刺す。
 ──この中に彼がいればと思い描いたこともあったが……それはもう叶わないようだ。
 ──嘆いている時間はない、私には卒業するまでにやるべきことがたくさんあるのだから。
 我々の左腕に装着されている“風紀”の腕章は、今日見てきた装飾品の何よりも美しく尊いものだ。
 私が完全にそちらを向いたことで一斉に姿勢を正す後輩たちに向けて、言う。
 
「踏ん張りどころだぞ諸君。共に忌々しい生徒会の連中を再起不能にし、秩序ある学校を取り戻そうじゃないか!」