チラチラと雪が舞い散るホワイトクリスマス。
 私たちの元にやって来たのはサンタクロースじゃなくて、クランプスだった。

 その夜、彼氏がいない私と愛海と梨乃は人々で賑わう街を歩いていた。クリスマスツリーやリース、キラキラ輝くイルミネーション。クリスマスマーケットなんて訪れるのは初めてで、すごくワクワクしていた。

 茜も一緒に連れて来られたらよかったのに。

 数年ぶりに自室に飾ったクリスマスツリーに目を輝かせていた茜の姿を思い出し、思わずクスリと笑いがこぼれる。

 「なによー、思い出し笑いしてさ。イイことでもあったわけ?」 

 気味悪がるような目で愛海がこちらを見る。

 「ううん、なんでもない。親戚の子がクリスマスツリーにテンションあがってる姿を思い出しちゃっただけ」
 「あー、なんだそんなことか。てっきり、カレシでもできたのかと思ったわよ」
 「まさか……」
 「そーだよね。ワタシだってまだいないのに、アンタには先越されたくないわー」
 「ちょっと愛海、美守に失礼だよ」
 「うっさいなー、梨乃は。美守の保護者かっつーの」

 ムスッとする愛海に私は苦笑する。愛海は集まった時から機嫌があまりよくない。
 無理もないか。親友の萌が不在なのだから。

 「あーあ、萌も来れたらよかったのにさー」

 愛海が歩きながら宙を見上げて、唇を尖らせる。

 クリスマスマーケットに四人で行こうと提案した愛海は、はじめのうち不機嫌さを滲ませていた。だけど、賑やかな出店や巨大なクリスマスツリーを見ているうちに機嫌がよくなってきて、笑顔を見せるようになった。

 ホットチョコレートを飲んだり、熱々でジューシーなフランクフルトを食べたり、雑貨を眺めたりと、楽しいひと時が過ぎていく。

 そろそろ帰ろうかという流れになり、最後にクリスマスツリーをもう一度見て、三人で写真を撮ろうということになった。
 そのクリスマスツリーの下には、とんでもない最悪のプレゼントが待ち構えていた。

 いくらか人がはけて行って、移動がスムーズになってきた。人だかりができていたツリーの下にも、空きスペースが見られるようになっている。

 「え、なんで―…」

 愛海が切れ長の瞳を大きく見開いて、愕然とした声で呟いた。

 「ま、まなみ……」

 凍えた声で友達の名前を呼んだ萌は、ツリーの下で伊達先輩と抱き合っていた。