その次の日、私は朝っぱらから萌にいきなり呼び出された。
瀬名と一緒にいたところを詰られるのだろうか。不安な気持ちで外出の準備をしている私を、茜が不安げな目で見ていた。
「大丈夫か、美守」
「なにが?」
「恍けるなよ。昨日、何かあったんだろ。お見通しだぜ」
茜は鋭い。昨日の出来事を洗いざらい話してもいいけど、瀬名君との素敵な時間をセッティングしてくれた茜を心配させたくない。
どう答えよう。迷っているうちに、茜が眉を顰めた。
「瀬名に嫌なことでもされたか? だとしたらすまねぇな。俺が余計なことをしちまったから」
「違うよ、茜。瀬名君との時間はすっごく楽しかった」
「なら、いいが」
「じつはね、萌と鉢合わせちゃって」
「萌……、ああ、前に一度カラオケ行った連中の一人か。確か、長い巻き髪の小柄な狸顔の奴だな」
一度会っただけなのに、よく覚えていたなあ。
感心すると同時に、ほんの少しだけ頭の片隅に靄がかかった。
もしかして萌を覚えていたのは、萌が可愛かったから?
冗談めかして聞いてしまえればよかったかけど、私にはそんな度胸はない。それに瀬名君を好きな私には、茜が自分以外の女の子に魅かれるのを批判する権利はない。
飲み込んだ疑問が胸に少しつかえた。
小さな閉塞感と不快感を表面に出さないように気を付けつつ、私は昨日萌に会った時の状況を茜に説明した。
「なるほどな。萌って女がお前と瀬名の仲に嫉妬して、何かしてくるかもってわけか」
「わからないけど、いい話で呼び出されたわけじゃなさそう」
「よし、俺がついて行ってやるよ」
「ええっ、それはいいよ。嫉妬の種が増えるだけだし」
「萌って女は瀬名か、昨日一緒に居た伊達が好きなのにか?」
「それでもだよ。茜はかっこいいもん」
茜が一瞬目を見開いた。珍しく照れたような顔をしている。
茜なら「まあな」とさらっと流すと思っていたし、前に褒めた時はスルーだったのに。
萌が嫉妬するかもって言ったからだったら、悲しいな。茜はそんな浮ついた人じゃないと思いたい。
私は一瞬の茜の動揺を見なかったことにした。
「とにかく、がんばって行ってくるよ」
「本当に大丈夫か? 狐の姿で着いて行けば萌にはバレずに済むぜ」
「いいよいいよ、平気だから」
「俺はいつでもお前の味方だからな、美守」
茜の言葉が胸にじわりと広がった。
言葉は熱となって、胸から指先に伝わっていく。体中に力がみなぎっていく、そんな不思議な感覚だ。
「行ってきます!」
茜に手を振って、私は勇み足で待ち合わせ場所に向かった。
瀬名と一緒にいたところを詰られるのだろうか。不安な気持ちで外出の準備をしている私を、茜が不安げな目で見ていた。
「大丈夫か、美守」
「なにが?」
「恍けるなよ。昨日、何かあったんだろ。お見通しだぜ」
茜は鋭い。昨日の出来事を洗いざらい話してもいいけど、瀬名君との素敵な時間をセッティングしてくれた茜を心配させたくない。
どう答えよう。迷っているうちに、茜が眉を顰めた。
「瀬名に嫌なことでもされたか? だとしたらすまねぇな。俺が余計なことをしちまったから」
「違うよ、茜。瀬名君との時間はすっごく楽しかった」
「なら、いいが」
「じつはね、萌と鉢合わせちゃって」
「萌……、ああ、前に一度カラオケ行った連中の一人か。確か、長い巻き髪の小柄な狸顔の奴だな」
一度会っただけなのに、よく覚えていたなあ。
感心すると同時に、ほんの少しだけ頭の片隅に靄がかかった。
もしかして萌を覚えていたのは、萌が可愛かったから?
冗談めかして聞いてしまえればよかったかけど、私にはそんな度胸はない。それに瀬名君を好きな私には、茜が自分以外の女の子に魅かれるのを批判する権利はない。
飲み込んだ疑問が胸に少しつかえた。
小さな閉塞感と不快感を表面に出さないように気を付けつつ、私は昨日萌に会った時の状況を茜に説明した。
「なるほどな。萌って女がお前と瀬名の仲に嫉妬して、何かしてくるかもってわけか」
「わからないけど、いい話で呼び出されたわけじゃなさそう」
「よし、俺がついて行ってやるよ」
「ええっ、それはいいよ。嫉妬の種が増えるだけだし」
「萌って女は瀬名か、昨日一緒に居た伊達が好きなのにか?」
「それでもだよ。茜はかっこいいもん」
茜が一瞬目を見開いた。珍しく照れたような顔をしている。
茜なら「まあな」とさらっと流すと思っていたし、前に褒めた時はスルーだったのに。
萌が嫉妬するかもって言ったからだったら、悲しいな。茜はそんな浮ついた人じゃないと思いたい。
私は一瞬の茜の動揺を見なかったことにした。
「とにかく、がんばって行ってくるよ」
「本当に大丈夫か? 狐の姿で着いて行けば萌にはバレずに済むぜ」
「いいよいいよ、平気だから」
「俺はいつでもお前の味方だからな、美守」
茜の言葉が胸にじわりと広がった。
言葉は熱となって、胸から指先に伝わっていく。体中に力がみなぎっていく、そんな不思議な感覚だ。
「行ってきます!」
茜に手を振って、私は勇み足で待ち合わせ場所に向かった。



