昼食を食べたら、ポチはりっちゃんと一緒に馬車に乗って商工ギルドに向かいます。
 馬車って凄いね。
 あっという間に、屋敷から商工ギルドについちゃったの!
 そして商工ギルドの中は階段があるけど、りっちゃん杖を使って上がるって言うんだ。

「うんしょ、うんしょ」
「りっちゃん、頑張れ!」

 りっちゃんは頑張って一歩ずつ階段を上がっていくよ。
 倒れても大丈夫な様に、ポチと侍従のお姉さんがりっちゃんの後ろに控えているんだ。
 りっちゃんに何かあっても、ポチがりっちゃんを助けるのだ。

「ふう、もっとリハビリを重ねないといけませんわね」
「少しずつですよ。お嬢様」

 時間はかかったけど、りっちゃんは無事に階段を登りきったよ。
 頑張れば、もっともっとスムーズに歩けそうだなあ。
 りっちゃんは少し息を整えてから、会長さんの部屋に向かったよ。

「これはこれはお嬢様、お待ちしておりました。それに今日はポチちゃんも一緒ですね」
「そうだよ。今日はりっちゃんと一緒なんだ!」
 
 相変わらず太っているけど、ニコニコとした会長さんが出迎えてくれたよ。

「本日はご挨拶と共に、とある商品について相談に参りました」
「りっちゃんとポチが考えた商品なんだよ」
「ほほう、それは興味がそそられますな」

 おお、会長さんの目がキラリと光ったよ。
 りっちゃんとポチの合体作品を見たら、きっと驚くだろうな。
 という事で、ポチは早速マスクを装着!

「これは、口当てみたいな物ですか?」
「マスクといいます。口当てに近いですけど、もっと利用範囲を広く使えます」

 口当てって会長さんが言っていたけど、ポチは口当ては知らないなあ。
 とりあえず、難しいお話はりっちゃんにお任せだよ。

「例えば、風邪をひいた時にくしゃみや咳などの飛沫を他の人にうつす事が軽減されます。逆に看護する側も、病気の元を吸い込む事を軽減する事ができます」
「ふむふむ成程、これは医療現場には必要な物ですな」

 早速りっちゃんは、会長さんにマスクの説明をしたよ。
 りっちゃんは長い間病気と戦っていたから、やっぱり病気関係は強いよね。

「また、工事現場や鉱山でも粉塵を吸い込むリスクが下がります。同じ様に粉塵が出る現場に使う事ができます」
「成程、病気予防に加えて工事現場にも使えるのか。洗濯する手間はあるとは言え、口当てと共にうまく使えば有効ですな」

 おお、りっちゃんの説明に再び会長さんの目がキラリと光ったよ。
 会長さんもますますやる気になってきたぞ。

「できればね、口と鼻を塞いだ方が効果が高いんだよ。本当は使い捨ての物があれば良いけどね」
「使い捨ての物は研究する余地がありますよ。早速、商工ギルドで規格を決めましょう」

 会長さんは直ぐに職員を呼んで、りっちゃんとポチを巻き込んで話を始めたよ。
 折角だから、ちゃんとした物ができると良いよね。
 ちゃんとしたマスクが出来れば、きっと皆も助かるのだ。

「先ずはこの位で良いでしょう。さまざまな場面で使う事ができそうなので、先程言った通り国の研究機関にもお二人の名を添えて送っておきます」
「「よろしくお願いします」」

 書類もできたし、これで一安心。
 りっちゃんと一緒に作ったマスクが、皆の役にたってくれれば良いなあ。